Doon Kanda 「Labyrinth」

LABYRINTH [輸入盤CD] (HDBCD044)_893

グラフィックアーティスト Jesse Kanda のミュージシャンデビュー作。

生物が本来持つ生理機能、そのグロテスクな側面にクローズアップしたような独特のアートワーク。そこに付随するサウンドトラックと言うか、そういったヴィジュアル面での支援があって初めて完成に至る音楽という印象を受けました。と言うのも、Björk 、Arca 、FKA twigs といったこれまでのコラボレートの相手と比較すると、今作はどうしても薄味に感じるのですね。メロディには艶めかしくダークな雰囲気の中に純和風な情緒も感じられたり、また3拍子のワルツ調が多用されてるのも相まって、民謡／童謡のあどけなさの裏に隠れたおどろおどろしい部分を引き摺り出しているような、聴き応えのある深く妖しい空気を発してはいます。特に「Enigma」や「Mino」などではそこにクラシカルな荘厳さも加わって、アルバムの中でハイライトと成り得る強い緊張感が漲ってる。ただ曲の構成は良くも悪くも展開の少ないシンプルなものが多く、ともすれば平坦に感じられることもあったり。視覚面のインパクトが突出し過ぎて音楽がそこに追いついてないとも言えるか。それでも彼が目指す、現実への新たな角度からの視点、その世界観の片鱗は確かに表れています。

Rating: 6.9/10

Doon Kanda - Nastasya (Audio)