Jin Dogg 「SAD JAKE」「MAD JAKE」

SAD JAKE

SAD JAKE

  • 発売日: 2019/12/13
  • メディア: MP3 ダウンロード
大阪市生野区出身のラッパーによる初アルバム。


どちらも8曲20分台というコンパクトな内容ながら、方向性の違いによって敢えて2枚に振り分けられた楽曲群。いずれにしても一筆書き、と言うか、ほとんど殴り書きに近い印象を受けます。パンチラインを仕掛けることに囚われず、頭の中に湧き出る言葉をほぼそのままの状態で垂れ流し、それが辛うじて韻を踏んでいるような状態。このうち「SAD JAKE」はアルバム表題そのままに、彼の中にある喜怒哀楽の "哀" のみに焦点を絞った内容です。「手紙 (DEAR)」では自己嫌悪が轟々と渦を巻き、「小悪魔 (LITTLE DEMON)」では翻弄されながら人肌を恋しがり、そんな調子でどの曲でも、夜道を一人とぼとぼと歩く時の寂寥感が常に付き纏う。また上モノにはエレキギターアルペジオが多用されているのもあり、手法はヒップホップながらブルース的、フォーク的な感触が強く、それが内省的な歌詞をなおさら湿っぽく見せているように思います。そして最後に据えられた「夢中 (LOVE YOU)」ではその湿度が最高値に。「本当の涙ってこんなに暖かいってやっと気づいた」。まるで春の雨のような柔らかいノイズテクスチャーに包まれながら歌われる、そのリリカルな美しさ。

Rating: 7.7/10



Jin Dogg - 小悪魔 (LITTLE DEMON)(Official Music Video)




MAD JAKE

MAD JAKE

  • 発売日: 2019/12/13
  • メディア: MP3 ダウンロード
上記「SAD JAKE」と同時リリースのアルバム2作目。


「SAD JAKE」がブルース、フォークの "哀" なら、こちらはハードコア、メタルの "怒" 。明らかに鬱屈や衝動を持て余したギラギラの目つきで、キナ臭い殺気を漂わせながらドスの効いた声で囁いたり、時にはすっかり頭のタガが外れた状態で喚き散らしたり。粗削りにも程があると言うか、まるで外ヅラの体裁を保とうとする素振りがなく、本能的なワードばかり、本当に言いたいことしか言っていない。トラックにしても、インダストリアル風の不穏なノイズ音が露わとなった「傷 (CUT)」「糞 (F**K YOU)」や、スラッシーなヘヴィギターを大胆にサンプリングした「八つ墓 (KILL YOU)」など、とにかくアングラな攻撃性に特化した内容となっています。以前から Crossfaith と対バンを張るなどでロック畑への意識の高さは感じていましたが、ここまでドギツい内容だともう完全にハードコアヘッズの方をメインターゲットとして見ているのでは。近しいベクトルでありながら静と動のコントラストを持つ SAD と MAD 、この両者を合わせた sadmadjake こそが現在の彼の SNS アカウント名、つまり自分自身そのものだということですね。

Rating: 7.6/10



Jin Dogg - 黙 (SHUT UP) (Prod. DeathW!sh)(Official Music Video)