YAPOOS 「ヤプーズの不審な行動 令和元年」

ヤプーズの不審な行動 令和元年

ヤプーズの不審な行動 令和元年

ライブ音源とスタジオ録音による新曲を合わせた企画アルバム。


まずライブ音源に関しては、戸川純ソロ名義でのライブ内容と印象はさほど違わず、正直言って驚きはありません。むしろ純ちゃんのヴォーカルの粗さ、苦しさがどうしても悪目立ちし、彼女が本来持つ魅力が往年のファン以外には伝わり難くなっている状態で、もどかしさすら覚えてしまう。しかしながら唯一の書き下ろし曲「孤独の男」には思わず惹き込まれました。空想に耽ることで孤独を紛らわせ、いつかはこの孤独から抜け出したいと願いながら、部屋の中でただ静かに佇むひとりの男。その拠り所のない侘しさが仄暗くドリーミーなサウンドの中でゆらゆらと広がっていく。思えば戸川純 with Vampillia として数年前に発表した「怪獣」にしても、歌詞の内容から自分は強烈な悲しみを感じ取っていました。涙を流しながら街中を破壊し尽くす怪獣、その決して誰とも相容れることのない姿に、彼女は自分自身の深い孤独感を投影しているような気がして。純ちゃんはこういった心の隙間、微細なひび割れを描く表現力が昔から突出していて、現在でもその筆致の鋭さは衰えていませんね。彼女のオリジナリティの貴重さを改めて実感した次第。

Rating: 6.7/10