Moment Joon 「Passport & Garcon」

Passport & Garcon [Explicit]

韓国ソウル出身のラッパーによる初フルレンス。

彼は韓国出身ながら日本語も英語も堪能で、現在は大阪大学の院生として音楽を学びながらラッパーの活動を続けているとのこと。ただこの作品ではアカデミックな側面ではなく、海外から日本に移り住むひとりの人間として感じる違和感、悲しみ、怒りといったエモーショナルな表現をダイレクトにぶつけています。"クソチョン" や "外人" といった蔑称を筆頭に、おそらく彼が直に浴びせられてきたであろう暴言、差別の数々。それらに打ちひしがれながらも決して希望を捨てず、ラッパーとしての成り上がりを目指し、果ては日本全体の意識を改革してやろうと大志を燃やす、というナラティブ。ある程度は虚実綯い交ぜかもしれませんが、手堅く韻を踏みながら紡がれるその心情は、思わず目を背けたくなるほどの痛烈なリアリティを持って迫ってきます。永住権を勝ち取ろうと息巻くその名も「KACHITORU」や、韓国人への理不尽な偏見を逆手に取った「KIMUCHI DE BINTA」のようなオフェンス寄りの曲ですらも、その勢いの裏には苦悩や悲哀の色が透けて見える。彼の言葉を受けて自分は何を考えるか、自分の立ち位置は何処なのか。聴き手に激しく内省を促す重い一発。

Rating: 8.8/10

Moment Joon - TENO HIRA