Matt Elliott 「Farewell to All We Know」

Farewell to All we Know

Farewell to All we Know

  • 発売日: 2020/03/27
  • メディア: MP3 ダウンロード
英国ブリストル出身のシンガーソングライターによる、4年ぶり8作目。


エレクトロニクス主体の The Third Eye Foundation 名義と、弾き語りフォークソングの本名名義。両者は手法としては対極に位置していますが、最終的に向かう地平は共通しています。その地平とはすなわち、悲しみ、怒り、怖れ、諦め、その他諸々のマイナスの感情ばかりが渦巻くホーンテッドワールド。それが The Third Eye Foundation ではある程度のパワフルさを持って表現されていたのに対し、こちらは何ともシンプルな軽やかさで、しかし深い溜め息のような陰鬱さを纏って、冷たい水のように身体にさらさらと浸透し、聴き手を内側から浸食してくる。特にこの新譜では、アコースティックギターの演奏だけを取って見れば、爪弾かれる音色の中に何処となくスパニッシュな色味も感じられたり、チェロやピアノなど種々の装飾も含めて、ともすれば洒脱な、気品のある美しさを漂わせています。ただそこに本人のくぐもった囁きのような歌声が入った瞬間、全ての音はどっぷりと湿り、空気は澱み、差していたはずの陽も翳る。長くに渡ってダーク/ゴシックの修羅道を突き進んできた彼ならではの境地。しかしながら終曲は「The Worst is Over」。夜はいつか明ける。

Rating: 8.1/10



Farewell to All we Know