The Soft Pink Truth 「Shall We Go on Sinning So That Grace May Increase?」
Shall We Go On Sinning So That Grace May Increase?
- 発売日: 2020/05/01
- メディア: MP3 ダウンロード
彼が所属するエレクトロユニット Matmos と言えば、医療器具から牛の子宮まで何でもござれの奇抜なサンプリング技法が悪名高いですが、この課外活動では往年のパンク/ハードコアのカヴァーアルバムや往年のブラックメタルのカヴァーアルバム(どちらもチープな脱力シンセばかりが跋扈する怪作)で各方面のファンに喧嘩を売っていたりと、まあ何にしても大概だったわけです。それがこの新作ではガラリと様相を変えており、前述のような悪意を匂わせる類のユーモアは一切無し。心音のごとく繊細な響きを保つ4つ打ちビートに、アルバム表題を繰り返す女性クワイアコーラス、また種々の管弦楽器や環境音なども折り重なり、心地良い浮遊感と同時に荘厳な聖性を醸し出すアンビエントハウスとなっています。"トランプ当選後の世界に対して激しい怒りや悲しみを抱いていたが、それをそのまま吐き出すことはせず、ポジティブさを感じられる作品にしたかった" とは本人の弁ですが、清らかで暖かみに満ちた音の重層が空間目一杯にまで拡張していく、その圧倒的な音像には確かにスピリチュアルな慈愛、そして混沌たる世界を越えていくための力強さが。
Rating: 7.7/10