Jehnny Beth 「To Love Is to Live」
- アーティスト:Jehnny Beth
- 発売日: 2020/06/12
- メディア: CD
この新譜は "I am naked all the time" という、彼女にとってのマニフェストとも受け取れる鮮烈なラインから始まります。そしてジャケットではその言葉通りに自らを曝け出し、気高さと同時に謎めいたアンドロジナスな魅力を漂わせている彼女。世の中が定義するステレオタイプな女性性／男性性に囚われず、内なる自分をありのままに解放するのだと。この姿勢はもちろん音の方にも表れています。バンド本隊がポジティブパンクであればこちらはポジティブ R&B とでも呼ぶべきか、刺々しい生演奏から洗練されたエレクトロニクスに移行しながらも、Savages のプロデューサーを務めていた Johnny Hostile が引き続き参加しているのもあってか、バンドの持ち味だったダークな緊張感はここでも健在。その上で、感傷的かつ艶めかしい「Flower」「We Will Sin Together」のようなメロディアスな楽曲がある一方、Atticus Ross (Nine Inch Nails) の助力を得て「I'm the Man」ではインダストリアル由来の攻撃性を、「Human」では息が詰まるほどの荘厳なゴシック空間を展開し、美しさから激しさへの振り幅をダイナミックに表現しています。この多様性こそが彼女の本質なのでしょう。
Rating: 7.9/10
