Asher Gamedze 「Dialectic Soul」
- アーティスト:ASHER GAMEDZE
- 発売日: 2050/12/31
- メディア: CD
まず "植民地主義への抵抗" というのが今作の大きなテーマとしてあり、"弁証法の魂" なるアルバム表題については "動くことが必要なんだ、我々は動き続けるんだ" という Asher 本人の力強いメッセージが添えられています。決して抑圧に屈することなく、常にアクティブな姿勢を取りながらアウフヘーベンを目指すという意識が今作の基盤を成している…そんな解釈でよろしいでしょうか。1曲目「state of emergence suite」はそういった彼の思想がとりわけ直接的に反映されているであろう、テーゼ/アンチテーゼ/ジンテーゼの三部で構成される約19分の組曲。Asher のドラムは自在にうねりながら小さな破裂を絶えず繰り返し、ベースやサックス、トランペットはその激しいプレイを全く意に介していないかのような奔放さで並走。豊かに広がりながらも一本の緊張の糸で連結する、引力と斥力を同時に発しているような各パートの関係性。これはどの楽曲でも一貫しており、ピースフルな歌声が深く染み入る「siyabulela」、陽気でレイドバックした感触の「hope in azania」にしても、ドラムだけは常に破裂し続けて緊張を煽ってくる。この矛盾、相反の中にこそ道があるわけです。
Rating: 7.8/10