Protomartyr 「Ultimate Success Today」

Ultimate Success Today [輸入盤CD] (WIGCD464)_1068

Ultimate Success Today [輸入盤CD] (WIGCD464)_1068

  • アーティスト:Protomartyr
  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: CD
米国デトロイト出身の4人組による、2年10ヶ月ぶり5作目。


Joy Division あるいは Wire などを彷彿とさせる、所謂ポストパンクの中でも特にダークでシビアな緊張感を漂わせる部類。先達の急進的なサウンド並びにアティテュードを正統な形で受け継ぐ気鋭バンド。そういったバンドの基本的な立ち位置はそのままに、今作の特徴としてあるのはサックス、フルート、クラリネット、チェロといった楽器を用いてのジャズ方面へのアプローチ。過去作におけるシンセの役割を今作ではそれら管弦楽器が担うという形で、以前よりもしなやかで陰影の深い感触が宿り、バンドの持つ可能性を一歩外に引き出すことに成功しています。ただ外に踏み出てはいるけれども、全体から受ける印象はやはり閉塞的という印象が一番に来る。例えば冒頭「Day Without End」での、アンサンブル全体が徐々に熱を高め、今にも張り裂ける寸前まで膨張していく様子。それは無限大の広がりを感じさせるというよりも、窮屈な部屋の中でキャパシティ以上に膨らみ続ける風船の危うさ、息苦しさを聴き手に与えるもの。また「June 21」の歌詞では "外のガレージには優しい風が吹くのに/車の窓は錆びて開かない" と。そんな感覚がアルバム中ずっと。

Rating: 8.2/10



Protomartyr - Processed By The Boys (Official Video)

Rebel Wizard 「Magickal Mystical Indifference」

Magiakal Mystical Indifference

Magiakal Mystical Indifference

  • アーティスト:Rebel Wizard
  • 発売日: 2020/07/10
  • メディア: CD
オーストラリア出身、NKSV によるソロユニットの約2年ぶり3作目。


変なアルバム。再生した瞬間からソロで咽び泣き、ギアを一気に上げて激しくドライブするリフワーク。楽曲自体は80年代 NWOBHM の影響が色濃く、メタルとしては至って王道と言える大仰でパワフルな構成、どっしり構えた重厚さが一番にガツンと来ます。しかしそこに強烈な異物感を伴って混入してくるのが、ギチギチに歪みのかかったデスヴォイス、そして激しさの中にうっすらと恍惚を滲ませるディストーションサウンドの空間処理。幻惑的なアートワークの趣向からも想像できるアトモスフェリックなブラックメタルの要素が、半ば強引とも言える勢いで組み込まれているわけです。NWOBHM の鮮烈なダイナミズムとお一人様ブラックメタルのローファイで湿っぽい悪意という、同じメタルのカテゴリーでありながらイズムとしてはきっと真逆、 確実に食い合わせは悪いであろうこの異種配合。しかしこのバランス感覚が絶妙と言うか独特と言うか、所謂メロディック・デスメタルとも毛色が異なる、熱さと冷たさの入り混じった何とも不思議な聴き心地に転じていて、もしかしたらこれは今までにありそうでなかったニッチの開拓では。何でもひらめいたもの勝ち。

Rating: 8.0/10



REBEL WIZARD - not rain but the wizards tears (OFFICIAL VIDEO)