ムック 「鵬翼」 「6」 「極彩」


ムック祭りラスト。方向性が少し変わってきた最新の3枚。



鵬翼(通常盤)

鵬翼(通常盤)

シングル3枚を含む5作目。


ここにきて作風に変化が出てきました。もちろん今までの流れを汲む暗黒ヘヴィな楽曲もあるんですが、メタリックな轟音が密に詰まりまくった前作と比べると、音の風通しが良くなって比較的聴きやすくなり、そのぶん彼ら特有の昭和歌謡的なメロディが前に出てきてます。激しい曲でも暴力的なばかりではなく、柔らかい丸みを帯びた感じが出てるというか。特に湿っぽい陰りが漂う 「1R」 、暖かくも切ない 「昔子供だった人達へ」 はヘヴィネス抜きで完全にメロディが主体だし、モロにファンクを取り入れた 「鳶」 、曲名通り大仰なオーケストレーションが印象的な 「雨のオーケストラ」 、明るくポジティブな力強さに溢れてて、今までに無かったラストを飾る 「つばさ」 と、前作で堕ちる所まで堕ちたからか、そのダークサイドから一歩抜け出そうというチャレンジ精神が随所から感じられます。それが昔からのファンにとっては賛否両論かと思いますが、個人的には非常に好印象。メロディや演奏には以前からの魅力がそのまま残されてるし、決して浮ついてるわけではなくて地に足がついてると思います。ポジティブな空気までも貪欲に飲み込んだ意欲作かと。


Rating: 8.6/10



6

6

この頃から海外でも人気に火が付いてきた彼らの、初の日欧同時リリースとなるミニ作。


前作 「鵬翼」 では優しさをまとった雰囲気が特徴的で、ヘヴィネスも丸みを帯びた印象だったのが、今回では 「朽木の灯」 以前の窒息しそうな重苦しさ、攻撃性が幾分か戻ってきてるように感じました。ノイズ混じりのインスト 「666」 を経て 「空虚な部屋」 は80年代風の湿っぽさを持ったメロディと負の感情を撒き散らすデス咆哮、そしてダークなモダンヘヴィネスという、これぞムックといった曲。続く 「赤い空」 はアグレッシブに加速し、サビや間奏では壮大な広がりを見せるドラマチックさが新鮮。また 「はりぼてのおとな」 では情念深いメロディとプログレッシブな展開の複雑さが際立ち、その他も TMGE っぽいラフなロックンロール 「フォーティーシックス」 、グルーヴィな演奏と社会風刺的な歌詞が痛快な 「神の星」 、ド明るい青春パンク調の 「夕紅」 、たおやかで儚い哀愁を漂わせる 「遙か」 と、それぞれの楽曲でカラフルな色分けが成されてるんですが、全体的に見るとどうも小粒揃いと言うか、良くも悪くもコンパクトに納まってる感じがする。同じミニ作でも 「アンティーク」 のような濃さがあるわけではないかなーと。これも次の 「極彩」 への橋渡しのような作品だと俺は捉えてます。


Rating: 6.8/10



極彩(通常盤初回プレス)

極彩(通常盤初回プレス)

リリースにライブに多忙だった 「Devilish Years」 を締めくくる6作目。


今までにも彼らが持っていた音楽要素それぞれをさらにグレードアップさせてきたなという印象。 「極彩」 「嘆きの鐘」 ではより洗練されたヘヴィネスを叩きつけ、 「月光」 「ホリゾント」 では演歌かと思うくらいクサ味を増したメロディが飛び出し、またメロコア路線のド明るさを更新した 「謡声」 、バンドワゴン賛歌 「パノラマ」 、インダストリアル→ブギ調の 「25時の憂鬱」 、さらに 「優しい歌」 では沖縄民謡にまで手を出すなど、レンジの広さは過去最高。また歌詞の方向性も明らかに変わってきてますね。 「鵬翼」 でポジティブに前を見るようになり、さらに今回では力強くグッと足を地につけて踏み出していこうという。なのでヘヴィネスは保ちつつも開放的な空気が全体に流れてるわけですね。それは良いんですけど、ちょっと拡散志向に走りすぎて核となる曲に欠ける気がする。あとあまりに陽の光に当たりすぎて戸惑いを感じる部分もあるというのが正直な所。クセが無くなってきてるんじゃないのかなという。ズンと響く曲もあるんですけど、さらに輪をかけて賛否が割れそうな作品。


Rating: 7.4/10


こんな感じで強烈な個性を発揮しつつ、結成から今まで少しずつ変化を続けてきたムックでした。シングル聴く限りだと拡散志向がさらに加速してるみたいですが、10年という節目を越えてどんな姿になっていくのか、さらに追っていこうと思ってる所存であります。


Links: 【公式】 【公式(ユニバーサル)】 【試聴(リッスンジャパン)】 【Wikipedia