COALTAR OF THE DEEPERS 「Come Over To the Deepend」 「NO THANK YOU」 「newave」


COTD 祭りの後半。2000年代に入ってからの3枚です。この頃からナッキーは特撮としての活動も始まりましたね。



COME OVER TO THE DEEPEND

COME OVER TO THE DEEPEND

女性ギタリスト ICHIMAKI が加入し、ニューヨーク録音を敢行した3作目。


緻密に構築された前作から一転し、無駄を削ぎ落としてシンプルな音作りになりました。それぞれの音がタイトに研ぎ澄まされて肉体的なタフネスが増すと共に、メロディは男女ツインヴォーカルという編成を活かし、よりキャッチーな方面に向かってます。一撃必殺ハードコア 「MARS ATTACKS!」 を挨拶代わりに叩きつけ、続く 「UNLIMBER」 「HARD REALITY」 ではザラついた演奏とポップかつシリアスなメロディが交互に顔を出し、その緩急のバランスが絶妙で思わず唸らされる。しかし次の 「TASTE」 ではガラッと変わり、シューゲイザー由来の溶けるような陶酔感と暖かさが目一杯に広がる激甘ポップ。不意を突くアウトロが想像をかき立て、そこからカラフルな甘酸っぱさが弾ける疾走ギターロック 「C/O/T/D」 に繋がる、この流れはもう完璧。今までにはなかった陽の光を感じさせる切なさがここで炸裂してます。その後は起伏がより極端になってポップさがブーストされた 「THUNDERBOLT」 「THRASH LIVES IN SAVAGERY」 、フィードバックノイズの中で郷愁が漂う 「AKI NO GYOUNINZAKA」 、最後はドゥーミーな妖しさが迫り来る 「SYNTHETIC SLIDE」 でシメ。 「ストレートでポップ」 という新境地を彼らなりに開拓してみせた傑作です。


Rating: 9.2/10



NO THANK YOU

NO THANK YOU

4作目。初回盤には初の歌詞カードがつきました。


またも新境地。ここにきてメタル要素が大幅に増加しました。ミステリアスなアンビエント 「IT DAWNS BEFORE」 を経て、1発目 「GOOD MORNING」 からゴリゴリなメタリックサウンドの塊が雪崩れ込み、次の瞬間には清涼感あるメロディがスッと吹き抜けていくという。それ以降の曲も基本的には同じ方向性で、演奏はとにかくヘヴィで汚らしく、メロディはとにかくキュートで甘くといった具合に、両極端に分かれた要素が一つの曲の中に無理矢理ねじ込まれてます。いわば渋谷系デスメタル。境目のない融合というわけではなくかなりヤケクソで大味なぶつけ方で、落差を強調してとにかくインパクト重視といった感じ。 「STAR LOVE」 「GIANT」 「JET SET」 辺りはそういったキッチュな味が特に良く出てますね。その音の一つ一つのアクの強さでもって、何が飛び出すか分からない面白さを出すというコンセプトは成功してると思います。色んな意味で強烈にキャッチーだし、瞬間の切れ味にかけては抜群。数曲おきにインタールードを挟んでダレさせないようにする構成も良い。憑きものが取れたように能天気に振り切れた、異形のヘヴィロックです。


Rating: 9.0/10



newave

newave

(何故か) avex に移籍し、9ヶ月という短いスパンでリリースされた5作目。


前作のキレまくったヘヴィサウンドはグッと後退し、多彩なギターサウンドやエレクトロニクス等がしなやかな絡みを見せる、 「SUBMERGE」 の頃に通じる構築性を持った作風になってます。またアルバム名が思わせるようにキラキラした近未来感もありつつ、全体的には内省的な陰りを感じさせるのもあって、そういう意味でも 「SUBMERGE」 を彷彿とさせる。でもメロディがポップで聴きやすくなったのと、肩の力が抜けて余裕の感じられる雰囲気になったのが以前と違う点ですかね。民族的なパーカッションが印象的な 「downfall」 、眩しく輝くシンセを纏って未来へ突っ走る 「hyper velocity」 、感傷が滲んだホワイトノイズ×ヒップホップ 「prophet proved」 、トランシーな疾走感と幻想的なムードの中で Les yeux のスピリチュアルな歌声が木霊する 「newave」 、サンバとメタルが手を取り合って大団円の 「sweet voyage」 といった具合に、より拡散志向に走った粒揃いの内容。録音がバンドサウンドのダイナミズムに欠けるのが残念なんですが、それでも曲自体の冴えは決して衰えてません。様々なジャンルをボーダレスに渡り歩くニューウェーブ世界旅行、荷物はギター、的な。


Rating: 8.6/10


以上6作。高い点数ばっかりになっちゃったけどまあいいか。アルバム毎に作風を変えつつ、決して駄作は作らない鉄板バンド。今後どういう活動になるのか分かりませんが、ゆるりとチェックし続けたいと思います。ちなみに今月のツアーには私用のためいけません。ぐぐー。


Links: 【公式】 【Wikipedia