Dir en grey 「鬼葬」 「six Ugly」 「VULGAR」 「Withering to death.」


昨日に続いて、ディル回想の後半4枚です。



鬼葬

鬼葬

1年4ヶ月ぶりの3作目。


前作は深く暗くマニアックな世界観を展開してましたが、今回は一転してストレート、かつ妙に生々しいリアリティを感じさせるエログロ路線。これでもかとばかりに原色のエログロ世界が狂い咲く 「鬼眼-kigan-」 「ZOMBOID」 「FILTH」 「鴉-karasu-」 「ピンクキラー」 等々、どれもこれも放送コードスレスレのラインを掠めるハードコア曲ばかりです。その一方で強烈なストーリーが展開される 「Bottom of the death valley」 「embryo」 、存在証明を問う悲痛さが胸に突き刺さる 「蟲-mushi-」 と、スロウ曲はスロウ曲でまた別のインパクトを放ってます。サウンド面に関しては、最近の音に繋がるようなモダンヘヴィネスがこの頃から顔を出してきましたね。特に 「鴉-karasu-」 ではグルーヴィなリズムと上手く重なって、その毒がさらににブーストされてる。タブーだらけの表現で独自の道を邁進する問題作。16曲70分の大ボリュームでガッツリ堪能できます。


Rating: 8.6/10



six Ugly

six Ugly

シングル 「Child prey」 と同時リリースされたミニアルバム。


今回はミニ作ということで、緩急を考えずアグレッシブな曲のみで押し通すというコンセプト。前作で見られたモダンヘヴィネスをさらに大きく導入し、キレのある攻撃チューンばかりで固められてます。でも単に海外のヘヴィバンド勢の真似では終わっておらず、あくまで自分達のセンスと融合させるというバランス感覚も感じられますね。また再録曲の 「children」 はファンキーなミクスチャーロック、 「秒「」深」 は厳ついハードコアへと変貌を遂げ、ほとんど別曲となってるのも面白い。しかし後の作品と比べると何処か手探りな感があるというか、少し練り込みが足りない気がするのも正直なところ。展開が単調になりがちだからか、ついつい流しがちになってしまう。 「鬼葬」 から半年しか経ってないし、あまり時間がかけられなかったんでしょうかね。個人的には過渡期の習作という印象です。


Rating: 6.6/10



VULGAR(初回)(DVD付)

VULGAR(初回)(DVD付)

4作目。初回盤は 「OBSCURE」 の規制版 PV が入った DVD 付き。


今まで彼らはアルバムの中で様々な音楽性を取り込んでいましたが、今回はだいぶ硬派に絞られてます。メタリックなヘヴィネスをついに全編に渡って導入し、音楽的にかなり統制のとれた内容に。飛び道具的な虚飾の要素も少なく、タフに練り込まれたなあという印象。特に 「THE IIID EMPIRE」 は SYSTEM OF A DOWN を彷彿とさせる奇妙なリフを軸にラップとシャウトが交錯するディル流ミクスチャーで、彼らが一段上のステップに昇ったことを実感させられる必殺曲です。また 「触紅」 「RED...[em]」 では重たいグルーヴでうねる演奏と渋いメロディとの絶妙な対比にグッときたり、 「砂上の唄」 「かすみ」 「DRAIN AWAY」 といったメロウ曲と 「R TO THE CORE」 「NEW AGE CULTURE」 「OBSCURE」 等の瞬殺ハードコアが交互に顔を出しつつ、音のヘヴィネスは常に一貫してるので統一感が感じられる。完成度と説得力が増し、そのスタイルを確固たるものとしたアルバム。15曲が弾丸のごとくヒットしてきます。


Rating: 9.2/10



Withering to death.

Withering to death.

5作目。このアルバムでアメリカデビューも果たしました。


彼らはアルバムを出す毎に方向性を変えてきてたんですが、今回は割と前作の延長線上にある音。ただ音の物理的なヘヴィネスはさらに増し、歌詞はより辛辣な感情を吐き出すようになってます。また今回1曲1曲が短めで、余計な物をさらに削ぎ落としてソリッドになったという印象。その中にも甘さ控えめなようでしっかりツボを突いてくるメロディはしっかり貫かれてます。そして時には囁くように、時には喉を擦り切らせてシャウトする多彩なヴォーカルも良い。そのシャウトにおいても様々な声色を上手く使い分けてて、曲にしっかりフックを与えてる。特に 「Merciless Cult」 「孤独に死す、故に孤独。」 あたりではそのアイディアが冴え渡ってます。他では 「朔-saku-」 のシングル曲とは思えないくらいのアグレッション、「dead tree」 「悲劇は目蓋を下ろした優しき鬱」 の漂うような深い情念、またキャッチーな側面を生かした 「C」 「鼓動」 も素晴らしい。さらに進化を果たし、ひりつくほどにリアルな感情を上手く表現した傑作です。


Rating: 9.4/10


以上、こんな感じ。最近の若手ヴィジュにも lynch.ギルガメッシュ、 SKULL 等々メタル要素を取り入れてるバンドが多いですけど、その発端は多分 「VULGAR」 「Withering to death.」 だと思うし、今聴いても新鮮にヒットするパワーが感じられるので、ディルを初めて聴くんであればその2枚が良いかと。というかこの辺聴き返してて、 「THE MARROW OF A BONE」 でメロディサイド放棄してしまったのは失敗だよなーとつくづく思う。メロディとヘヴィネスを両立させるバランスがディルらしさを象徴する一番の武器なのに。同じもの作ってくれとは言わないけど、次回では頑張ってほしいものです。


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