筋肉少女帯 「仏陀L」 「SISTER STRAWBERRY」 「猫のテブクロ」 「サーカス団パノラマ島へ帰る」

大公式2

大公式2

彼らも商魂逞しいもので、これで何枚目だよと突っ込みたくなるベスト盤が今日出ましたね。これだけ出すならいっそ全カタログ値段下げて再発してくれよと思うのですが、まー今年でデビュー20周年だし、昨年の 「大公式」 の時に振り返りそびれたのでちょうど良い機会だと受け取り、筋少の過去作品についてズラズラ書きたいと思います。その1。




記念すべきデビュー作。この頃の編成は大槻ケンヂ内田雄一郎、三柴江戸蔵、美濃介、関口博史の5人。


いかんせん20年前の作品なので若干音質に難がありますが、そんなハンディを物ともしないくらい充実した楽曲が揃ってます。エディのクラシカルなピアノ独奏で厳かに幕を開け、アッパーな勢いとアングラ体質全開な毒素に満ちた 「モーレツア太郎」 「釈迦」 、変拍子を交えてユーロプログレ的な展開を見せる 「福耳の子供」 、ダークな閉塞感が重く圧し掛かる 「孤島の鬼」 、力強くドラマチックに疾走する名曲 「サンフランシスコ」 、重厚かつ壮大な曲調でオーケンの無常感漂う世界が広がる (その後ちゃんとオチまでつける) 「ペテン師、新月の夜に死す!」 等々キラー曲のオンパレード。ハードロック、プログレ、クラシックといった各メンバーの嗜好が拮抗しながら絶妙なバランスで融合し、その上でコミカルかつ文学的な歌詞が踊るという筋少イズムはデビューの時点で十分すぎるほど完成されており、20年経った今聴いてもその魅力はまるで色褪せていません。デビュー作にして名作。


Rating: 9.2/10




仏陀L」 から半年後のミニアルバム。オーケン、内田、エディ、太田明、ゲストに横関敦といった編成。


スパンが短いのもあってか、内容的には 「仏陀L」 の延長線上。あえて言えば太田氏のツーバスと横関氏の超絶速弾きでメタル色が幾らか増してるでしょうか。叩きつけるようにスラッシーな疾走を見せる 「マタンゴ」 、意外に歌モノとして真っ当な構成を持ちつつ、間奏のピアノとギターのソロバトルがスリリング極まりない 「キノコパワー」 と (何故か) キノコネタ2連発で始まり、一転してエディの持つクラシック要素が強く出た、妖しくも美しい曲調の 「夜歩く」 、また一転してアホなコントに脱力させられる 「日本の米」 、ファンキーなラテン調からパンキッシュになったりオペラになったりと忙しなく展開する 「ララミー」 、何だか悪い夢のようなアングラ劇場が9分に渡って膨張する朗読曲 「いくじなし」 と、ミニ作ながらその毒の濃さはまるで衰えてません。というか 「いくじなし」 聴いてるとあまりに濃すぎて脳ミソが窒息しそうな気になるよ。 「仏陀L」 とセットで聴くと良いと思います。


Rating: 8.2/10




エディが脱退して橘高文彦本城聡章が加入、所謂 「90年代の筋少」 となった3作目。


新メンバーの影響は確実に表れてます。特に橘高氏の超絶技巧ギターによって音にグッと厚みが増し、曲構成も真っ当なものになってメジャー感が出てきた。特に筋少の代表曲 「これでいいのだ」 「日本印度化計画」 が一番顕著ですが、どちらも歌詞はコミカルだけどダイナミックな演奏がやたらと仰々しい迫力を与えてて、妙な説得力が生まれてます。またそこはかとなく無常感を漂わせる 「星の夜のボート」 、007主題歌の牧歌的なカヴァーから 「最期の遠足」 でアングラかつシュールなオチをつけるピクニック3部作、深遠でミステリアスな雰囲気から複雑に展開していくプログレ大曲 「月とテブクロ」 と粒揃いの楽曲群。曲調の幅を広げながら、どの曲でも肉体性が強化されてさらに聴き応えが増してます。ここから2人の貢献度が増していって、バンドの方向性も徐々に変化していくという。筋少の黎明期ですね。


Rating: 8.4/10



サーカス団パノラマ島へ帰る

サーカス団パノラマ島へ帰る

ニューヨークでミックス/マスタリングを行った4作目。セールス的にはこの頃がピークか。


狂気と厭世が交錯する 「ビッキー・ホリデイの唄」 、働け働けと執拗に連呼して冷たい現実を突きつける 「労働者M」 、凄まじくダークな空気の中で逃避願望を訥々と歌う 「パノラマ島へ帰る」 等、 「現実逃避」 という後ろ向きまっしぐらなテーマを軸に歌詞が展開、さらにはジャケットも凝った作りでコンセプチュアルな大作となっております…が、正直個人的には筋少の中で一番聴いてない作品だったりします。緊迫感溢れる高速 HR/HM に乗って後の地下鉄サリン事件を予言した (違う) 「詩人オウムの世界」 は格好良いけど、それ以外は単純にあまり好きじゃないというか、曲の練り込みが足りない気がするのですね。インストの小品が多いのも全体のボリュームを無理矢理水増ししてる感があるし、強い説得力という所までは届いてないと思う。なのでいま一つ馴染みの薄い作品なのでした。あと 「元祖 高木ブー伝説」 はバカバカしいけど意外と構成凝ってて普通に好きです。


Rating: 6.6/10


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