特撮 「爆誕」 「ヌイグルマー」 「Agitator」


最近オーケン筋少絶望先生関連で精力的だからか分かりませんが、昨日特撮の徳間ジャパン時代の初期3作がリマスタリング再発されました。今特撮がどういう状態なのか分からず、下手したらそのうち空中分解なのかもしれませんが、そもそも俺がオーケン関連で初めて聴いた作品は 「爆誕」 で、そこから後追いで筋少COALTAR OF THE DEEPERS も知ったという流れなのです。なのでこの機会に特撮のカタログについてずらずら書くの巻。まず前半の3枚。



爆誕

爆誕

記念すべきファースト。この頃は内田雄一郎氏もメンバーでした。


当時はパンクチームという肩書、トラウマパンクというキャッチフレーズで売ってた彼らですが、確かに様式美 HR/HM 的だった筋少とは違ってこちらは直線的なパンク/ハードコア。重さと鋭さでガシガシ迫るスラッシーなアグレッションがまず身体を突き上げるのですが、このメンツで普通のハードコアをやるはずはなく、サブカルコミカル文学チックなオーケンの歌詞、ギターにまつわる様々な音楽を通過した NARASAKIラウドロックセンス、情感豊かにクラシカルな美しさを添える三柴理のピアノ、レゲエ特有のしなやかさと攻撃性を兼ね備えた有松博のドラムス、そういった各メンバーの個性がガッツリ噛み合って異形のヘヴィサウンドが展開されているのです。でもこの頃は本来のパンク/ハードコアに一番近い、比較的シンプルな作風ですけどもね。瞬殺ファストチューン 「アベルカイン」 「特撮のテーマ」 、ポップなメロディが痛快に広がる 「身代わりマリー」 「ピアノ・デス・ピアノ」 、プログレ風の奥行きと切なさが異色な 「ピアノ・デス・ピアノ 愛のテーマ」 「テレパシー」 等々。結成したてだからかカヴァーや提供曲多数だけどトータリティもバッチリな、デビュー作にして傑作。


Rating: 9.0/10



ヌイグルマー

ヌイグルマー

前作からわずか8ヶ月で完成した2作目。ジャケイラストは D[di:] 作です。


パンクチームというコンセプトは2作目にして早くも取っ払われ (笑) 、単純に 「ヘヴィロック」 を基盤としてさらに雑多なジャンルを取り込んでいます。何処か勇壮さすら感じる力強い攻撃曲 「戦え!ヌイグルマー」 「ジェロニモ」 、彼らの楽曲の中でも随一のヘヴィポップナンバー 「バーバレラ」 などの王道曲がある一方で、何故か落ち着いたジャズ/ファンク調の 「企画物 AV の女」 、特撮流ヒップホップミクスチャー 「ケテルビー」 、情熱的なヘヴィサンバ 「トンネルラブ」 、あまりにも美しくて陶然とするアコースティックポップ 「アザナエル」 と、曲調の幅を一気に押し広げてます。各メンバーがさらに己の個性を剥き出しにして、激しさと美しさ、シリアスと脱力、そういった相反する要素が絶妙なバランスで拮抗し、楽曲が一段と練り込まれたものになってる。やはりクラシックピアノという武器の存在がミソで、安易な予想をひっくり返すアイディアが随所に効いていて否応にも引き込まれます。佐藤研二氏のぶっとい極悪ベースもサポートとは思えないくらい大きく主張していてとても格好良い。個人的にはこれが最高傑作。


Rating: 9.4/10



Agitator

Agitator

徳間時代ラストの3作目。こちらのジャケ画は小岐須雅之氏。


演奏がさらにドスの利いたヘヴィネスに移行してるのと、オーケンの歌詞が抽象的でサイケデリックだったり猟奇的なテーマを扱ったものが多いからか、前2作よりもアングラな毒気の強い作風になってると思います。アグレッションが一層際立って刺さる 「超越人間オーケボーマン」 、トライバルな躍動感とキナ臭さが充満した 「人狼天使」 「悪魔巣取金愚」 、 Black Sabbath 調のドゥーミーな凄味で迫る 「人間以外の俺になれ」 、緩やかなムードが逆に薄ら寒さを醸し出す 「揉み毬」 、息の詰まるほどに圧倒的な緊張感の 「殺神」 など、どれもダークで重々しく、殺伐とした印象。ポップな印象の強かった 「ヌイグルマー」 から一転して、音の濃さを重視したズッシリと圧し掛かるタイプのヘヴィサウンドですね。初期筋少のようなドロドロした業の深さまではいかないけど、何だか出口のない閉塞的なムードすら漂ってる気がする。でもこれはこれで別の側面といった感じで面白いです。 「ゴスロリちゃん綱渡りから落下す」 とか切り取り方が凄くオーケンらしいと思うし、あくまでコミカルな味は健在なので。やはり傑作。


Rating: 8.6/10


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