黒夢 「生きていた中絶児…」 「亡骸を…」 「迷える百合達 〜Romance of Scarlet〜」

http://www.kiyoharu.jp/special/kuroyume_live/



すでに報じられている通り、今月末に黒夢日本武道館で復活ライブを行います。このライブをもって無期限活動休止から正式な解散になるとのこと。人時から提案があったらしく、当日では 「2009年版の黒夢を見せる」 と意気込みを語ってる清春


正直このニュースを聞いた時は複雑な思いでした。いつかやるかもとは思ってたけど、本当にやってしまうとは。名古屋ハートランドで活動休止宣言した1月29日と同日、ライブタイトルが "the end" に続いて "CORKCSCREW A GO GO! FINAL" ときたもんだ。10年前のツアーにようやくケリをつけるという意味合いなのか分かりませんが、10代の頃に人気絶頂期をリアルタイムで追っかけてたノスタルジジイ (俺) を撃ち抜くのにはこれ以上ないサービス。


そもそもどういうステージにするのか。後期のパンク/ハードコアスタイルだと今のモードとあまりにも乖離しすぎてるし、アルバム出すたびに個性を作っては叩き割り作っては叩き割りしてた人達なので、全ての時期から満遍なく演ると凄く散漫な内容になってしまうはず。やっぱタイトルがコークスクリューだし、久々にパンクやるんかいな…と思ってたら、ライブ直前にセルフカヴァーアルバム出すんですね 【これ】 。多分このアルバムから中心にセットリスト組むんでしょうけど、なんか社長の戦略的商法に踊らされてる気がしないでもない。もっとシンプルに過去と決別すりゃ良いのに…と思うんだがどうでしょう。


でも何だかんだ言っても黒夢は俺の中で特別思い入れの強い存在なのです。初めて行ったライブは黒夢、昔のカタログ遡って全て揃えるほどハマったのも黒夢が最初。あの時カウントダウン TV で 「少年」 の PV を見なけりゃこんな CD に散財することもなかったのに…。日本武道館にはスケジュールの都合で行けないけれど、10年前の感覚を思い起こして東京まで念を送ることにします。そんなわけで黒夢祭りの1/3、インディーズ〜メジャーデビュー時の3枚です。



生きていた中絶児

生きていた中絶児

デモテープでリリースされていた作品の CD リイシュー盤。


この頃は筋金入りのオールドスクールヴィジュアル系ルックスで、ライブ中に首吊って本当に死にかけたとかの逸話もあったり。それで楽曲の方もエログロダークな世界観でヴィジュの王道を行くスタイルです。高校生時代に初めて聴いた時はまーわけ分からんみたいな印象しかなかったのですが、今聴くと意外に HR/HM 成分が高くてビックリする。音は正直ペラペラで時代を感じてしまうのですけど、ミドルチューン 「狂い奴隷」 「楽死運命」 ではハードロックなギターリフとプログレ的曲展開、それらがドロドロの歌詞と相まって奇妙な重さ/禍々しさが漂ってる。後のダークヴィジュの原型とも言える2ビート疾走曲 「黒夢」 「親愛なる DEATHMASK」 にしても何処かベチャッとした湿度が纏わりついてるし、シークレットのバラード曲 「鏡になりたい」 に至っては清春の情念溢れすぎなヴォーカルが夢にまで出てきそうな気持ち悪さ。聴き進めるほどに袋小路に嵌っていくような感覚、この業の深さこそインディーズダークV系の神髄だよな! (シタリ顔) 色んな意味で超マニアックなのであまりオススメはしませんけど、重箱の隅を突いてみたい方はどうぞ。


Rating: 6.8/10



亡骸を…

亡骸を…

初のフルアルバムにしてインディーズラスト作。


当時はラルクが光なら黒夢は影といった風にインディーズシーンで人気を二分していたそうですが、内容は 「生きていた中絶児…」 「中絶」 で見せたスタイルをさらに進化/発展させた内容。ヴィジュアルの始祖と言えば BUCK-TICKLUNA SEA 辺りが思い浮かびますが、そういった先人達の耽美派ビートロックといった音楽性からダークでドロドロした世界観、また昭和歌謡にも通じるメロディの深い哀愁をフィーチャーし、好き嫌いハッキリ別れさせるほど 「ヴィジュアル系としての濃さ」 を追及したという点で初期黒夢はダークヴィジュのオリジネイター的な見方をされてるのですね。もちろん清春のグラマラスで個性抜群なヴォーカルという武器の存在も大きいですけど。過去作に比べるとクリーントーンの比重が増して幾分かスタイリッシュな作風、また曲調の幅も順当に増えてある程度聴きやすくはなってますが、2ビート疾走曲の完成系 「UNDER...」 、愁い満載の 「賛美歌」 「亡骸を…」 、再録されてさらにブチキレた 「親愛なる DEATHMASK」 などやはり濃さ満点の曲ばかり。どうしても90年代前半の古臭い印象は残りますが、ある種パイオニア的な意義のある一枚だと思います。


Rating: 8.0/10



迷える百合達~Romance Of Scarlet~

迷える百合達~Romance Of Scarlet~

いきなりチャート3位を記録したメジャーデビュー作。


佐久間正英がプロデュースを担当しており、音の方もヴォーカルが主役に立った J-POP として上手く整理整頓された、佐久間氏の仕事っぷりが感じられる内容になってます。程良い疾走感で聴かせる 「棘」 「for dear」 「neo nude」 といったヴィジュポップの王道曲から、噎せ返るような妖艶さが際立った 「masochist organ」 「百合の花束」 、アグレッシブ寄りの放送禁止歌 「autism 〜自閉症〜」 など。従来の個性を保ちつつ、インディーズの頃に比べると随分と角が取れてオーバーグラウンド仕様に向かって行ってるのが分かる。部分部分で惹かれる箇所もあるけれど、この時期はまだメロディの練りこみが足りず、個人的には後の 「feminism」 で完成されたメジャーポップスに至るまでの過渡的な作品という印象です。ただ何気に、耽美的な妖しさで貫かれた J-POP という所で、今現在の清春のスタイルに一番近いのはこのアルバムかもしれない。そういう意味で実はここが彼の原点と言えるのかなと。ファンで未聴の方は確認してみてください。


Rating: 7.4/10


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