FUJI ROCK FESTIVAL '10 3日目


あっという間にフジロック3日連続の最終日です。



昨日遅くまで遊んでたため若干寝坊してしまい、慌て気味に支度。やっぱり疲れがあんまり抜けてないけど頑張る。この日も日中は概ね晴れ。もはやガソリン (ビール) だけが頼りだとばかりにケバブ片手に飲む。今日は夜までゆるゆる過ごすんだ…。アレのために。


→Pia-no-jaC← @ ORANGE COURT
ボードウォーク辿ってオレンジに着くと結構な人の入り。巷で話題のピアノ+カホンの2人組です。オムニバスとかでちょこちょこ聴いたことはあったけどライブは初めて。音源でもライブのパフォーマンスをそのまま録音したみたいなノリでしたが、実際に見ると確かにはっちゃけた勢いがありました。オリジナルに加えクラシック曲のカヴァーも織り交ぜていましたが、しっとりしてるヒマは無くクラシックの可憐な美しさをバカテク駆使した速弾きでブーストし、荒々しくダンサブルにノらせる。とにかく攻めの姿勢で客を煽りまくる楽しさ最優先のパフォーマンスがなかなか痛快でした。このバンドは音源より生で見た方がずっと良いですね。テクニックを磨いてひたすら演奏に没頭するその熱量、楽しさがこちらにも伝わってきました。


YEASAYER @ RED MARQUEE
レッドに戻ったらこちらも満員に近い人の多さ。いつの間にそんな注目されてたんだ。ブルックリン出身の5人組インディバンド。俺は完全に初聴きでしたが、この後の Vampire Weekend しかり MGMT しかり、ブルックリンでインディときたらもう Pitchfork の好物ですわな。このバンドもやはり、ローファイ系アンサンブルに知的なシンセ/エレクトロニクスを絡ませたインディロックらしいインディロック。でもメロディは何処かエキゾチックな風味のポップさがあり、時にはダンサブルな面も見せて入り込みやすい。でも酒とか疲れとかで眠くなって立ってられなくなったので途中退出。ごみん。


VAMPIRE WEEKEND @ GREEN STAGE
天気も良かったので DONAVON FRANKENREITER 見ながらうたた寝し、少し体力回復して前の方へ。こないだの新作が良い感じだったけど、前にサマソニで見たライブがダメな記憶しか残ってなかったのでどうなることやらと思いつつ見ましたが、彼らが経験を積んできたからか、俺の予備知識が増えたからか、だいぶ良くなってると思いました。内容は 1st と 2nd を織り交ぜたセットリスト。メンバーの中流階級ぼっちゃん風な出で立ちは相変わらず癇に障るんですが (苦笑) 、パフォーマンス自体は堅実に演奏をこなしつつ堂々としたもので、楽曲は素朴な印象だけど意外にグリーンのスケールにも合ってる気がしました。このバンド特有の朗らかで暖かいメロディ感覚は歌いやすいしノリやすいのですね。改めて聴いてもやはりどの曲も粒が立っており、しっかりフックがあってすんなり入り込める。これは見直しましたね。


BOOM BOOM SATELLITES @ GREEN STAGE
グリーンに常駐してブンサテ。見るのいつ以来だったかな?メンバーが何だかヴィジュアル系みたいな出で立ちでキュンとくる (おい) 。2人してフライングVで同じようにヘッドを振るというのはよく考えると相当ベタだよなー。そしてドラムが平井直樹じゃなくなったのいつから?明らかに打ち込みリズムの方が強度あって存在感薄いような…。演奏の方は直球ロッキントランスでガンガンにアゲてくる内容。なのだけどやはり彼らの性格が出てるのか、起伏はダイナミックなんだけど驚くような破綻はなく実にカッチリカッチリした印象。ホント真面目だよなこの人たち。溜めと発散のタイミングも結構読めてしまって、何も考えずにはしゃぐぶんには良いけどやはり物足りなさも残るかなといった所。でも最後の 「Kick It Out」 「Dress Like An Angel」 はアガりました。単純に好きな曲だから (笑) 。


ATOMS FOR PEACE @ GREEN STAGE
ついに来たぜ…!今年のフジの目的の半分以上は彼らと言っても過言ではない。 Thom Yorke と Flea が手を組んだスペシャルバンド。個人的にトムを見るのは確か2004年の Radiohead 単独公演以来。ここまで長かったな…。グリーンはおそらくこの3日間で一番の人の多さで注意アナウンスも出るほど。前のブンサテでも最前にはトム信者が場所取りしてたとの噂もあり、褒められたものではないけど気持ちは分かる。この機会逃したらもう見れないとか煽られたら、そらトムヨーク信者としては見ないわけにはいかんだろ。実は春の米ツアー時のセットリストを事前に見てしまったのですが、内容はトムのソロ作 「The Eraser」 を曲順通りに演奏するというもの。あのアルバム、トムらしくて良いのは良いけどレディへ本隊ほどの凄味のようなものはやはり薄いな、という印象だったのだけど、ライブではどう変わるかという期待もありつつ。


そして今回のライブもやはり曲順通りの 「The Eraser」 でしたが、単なる CD の再現ではなかった。生ドラム、パーカッション、エレクトロビートが入り混じりシャープで神経質なビートが冷徹に鳴らされ、そこにトムのヴォーカルとフリーのベースが有機的な彩りを添えるといった形ですが、まず音源よりもリズムの強度が段違いでした。フリーはブンブン身体をくねらせる独特のパフォーマンスでファットなグルーヴを弾き出し、それに呼応するかの如く皮膚に突き刺さるような鋭いビートが乱打され、ファンクと IDM が混在した歪なダンスグルーヴを形成していく。ピンと張りつめた不穏な緊張感と甘美なメロディ、そしてリズムの捻れた躍動。俺はメロディと歌詞が前に出た表題曲 「The Eraser」 が特に好きだったんですが、フリーのダブ風ピアニカが呪術的ムードを醸していた 「Skip Divided」 、より一層加速度のついた 「And It Rained All Night」 と、終盤の曲になるほど緊張、甘美、躍動の相乗効果が増していき、苗場の空間を丸ごと飲み込んでしまいそうな程にダークなムードが広がっていました。もちろんダークなだけではなく、そこにはある種のカタルシスも確実に存在してた。瘴気を吐いてダンスを続け、頭の中を白く塗り潰していくような感覚。


そして 「The Eraser」 収録曲を全て演奏し終えるとメンバー退場。だいぶ早くないか?と思ったらアンコール込みの持ち時間だったのね。まずはトムが1人で登場し、アコギを抱えて歌い出したのは 「I Might Be Wrong」 !その他もピアノ弾き語りの 「Videotape」 、 「Paperbag Writer」 とレディへのセルフカヴァー連発。ああ、レディへ見たいなあ…。できれば 「Everything In Its Right Place」 とかも演ってほしかった (コーチェラでは演ったらしいね) 。その他に新曲も多数演奏されましたが、方向性としては本編の曲と同じ。やはり真綿で首を絞めるような優しい憂鬱、甘い毒の心地良さは変わらず。最後までその緊張、切迫した感覚を途絶えさせることなく終了。さすがの貫禄を見せつけるステージングでありました。まるで蛇に睨まれた蛙みたいに、その音世界に完全に見入ってた。文句なしのアクトです。


BELLE AND SEBASTIAN @ WHITE STAGE
大トリを MASSIVE ATTACKBELLE AND SEBASTIAN どちらにするかで迷ったけど (どっちにしても地味だが) マッシブだとずっと気が張って疲れるかと思ったので、気軽に見れそうなベルセバをチョイス。しかしここにきて最後の雨が…。やはり丸1日晴れてくれるわけにはいかないのか。またしても難民状態でココナッツカレーかっ食らい、アヴァロンで一休みしてからホワイトへ。


まず俺が勝手に抱くベルセバのイメージというのがあり、気難しそうな文系青年が一切観客の方を向くことなく素朴なメロディを淡々と歌う、 「俺は好きなことやるからお前ら勝手に楽しめ」 みたいなスタンスだろうという先入観バリバリの状態で臨んだんですが、まー色々と裏切られました。この日の彼らは日本人の弦楽四重奏を従えた12人編成 (多分) 。中心人物の Stuart Murdoch は意外にガタイが良く、曲中もピョンピョン跳ねたりステージ降りてダイブしたり、途中では即興でビートルズを弾き語ったり、さらには 「イッショニ オドリマセンカ?」 と客の数人をステージに上げてダンスを踊らせたり、予想に反して親しみやすいエンターテイナーでした。これには良い意味で面食らった。そして楽曲の方は、皆さんご存じの通りグッドメロディの応酬。大人数だけど無駄にゴージャスにはならず、むしろさらさら流れる小川のような素朴な優しさと、仄かな冷たさや翳りを同時に感じさせるインディ・フォーク・ポップがひどく心地良かったです。できれば 「Another Sunny Day」 とかも聴きたかったけど、雨降ってたから演らなかったのかな (笑) 。最後は美しく緩やかな幕引き。


こんな感じで今年のフジは終了です。ベストアクトは当然のように ATOMS FOR PEACE 。次いで EGO-WRAPPIN’ AND THE GOSSIP OF JAXX 、 THE XX かな。いやーしかし今年もよく雨降ったねえ疲れたねえ。参加した皆々様お疲れ様。