kamomekamome 「Happy Rebirthday To You Tour」 @ 十三ファンダンゴ


国内ハードコアの名産地、千葉は柏出身の5人組 kamomekamome 。先日リリースされた最新作 「Happy Rebirthday To You」 が予想以上の傑作だったので、今回のレコ発ツアーもぜひ参加したいと思い、行ってきました。サポートを務めるのは盟友 GARLIC BOYS 、 HAWAIIAN6CROSSFAITH と豪傑揃いの大阪公演。


会場はほぼ満員。分かっちゃいたけどほぼ男。もしかすると本チャンのパンク/ハードコア系のイベントに参加するのって今回が初めてかもしれない。8〜9割方がバンドTシャツのむさ苦しい野郎で占められ、静かに熱気の充満したファンダンゴ。もう演奏が始まればヤバいノリになるのは目に見えてる。とりあえずフロア後方のバーカウンターでガソリン (ビール) 補給して身体を暖め、でもチキンなので最初は様子見で後ろの方で腕組み。以下出演順に感想やらを。


CROSSFAITH
名前も音も聴くのは初めて。大阪出身の5人組。20歳そこそこの若手ということで、音の方は鋭く研ぎ澄まされたヘヴィネスに、ニューレイブ風のビープシンセを噛ませたメタルコアサウンド。予想以上に洗練されてる。 Enter Shikari とかが近いのかな。若いながら鳴らす音のアグレッションは血肉にクるものがあり、ツーバス交えて一点突破的に爆走したりバウンシーなノリでヘドバンを誘発したり。ヴォーカルも常にデスシャウトしっ放しなのだけど、自在に変速を繰り返すヘヴィグルーヴの心地良さがあり、すんなりノることができました。フロア中央では血気盛んな猛者が早速反応してサークルモッシュ発生。冷静に考えるとよくあるタイプの音なのだけど、生音での迫力はなかなか聴き応えがありましたね。


HAWAIIAN6
最初は出演がアナウンスされてなかったはずだけど、おそらく今回のメンツの中で最もファンが多かったんじゃないかな。スリーピースのパンクバンド。前に音源をちらっと聴いたことがあるのだけど、その時と印象は同じ。直線的でオーソドックスなパンクロックに、日本人らしい昭和歌謡風の哀愁メロディを混ぜ込んだもの。もともと昭和歌謡と言われると大好物なので好きになれそうな音楽性なんですが、うーんなんだろう、英語の歌詞があまりメロディと親和してないからか、演奏のグルーヴが足りないからか、生で聴いててもイマイチのめり込めないんですよね。 MC も短く矢継ぎ早にショートチューンを連発し、フロアではやはりモッシュダイブ大発生なのだけど、個人的にはテンションのギャップを感じながら後方で眺めていたのでした。


GARLIC BOYS
こちらも以前に音源を聴いたことある、大阪出身のベテラン4人組。ギターの LARRY はカモメの向と DUFFLES として活動したり、昔から交流は深いですよね。何故か少年隊 「仮面舞踏会」 の SE に乗って (笑) メンバー登場。 PETA と LARRY の兄弟コンビ以外は流動が激しいようで、この日はドラマーも加入したての様子。


いやー、ニンニク臭い野郎たちは何かが違う。音の中にはベテランの貫禄というのもあるだろうけど、それよりも大阪人らしいコミカルな親しみやすさ (PETA も LARRY も下町の気さくなオッサンといった感じ) と、パンク/メタル/エモ/ハードコアといった様々なラウドロックのエッセンスを凝縮しショートチューンの中に詰め込んだ濃厚なパフォーマンス。この日は30分の短い持ち時間ということで休憩は入れず、アッパー曲のみで占められた攻めのセットリスト。パンクの荒くれた疾走感とコールアンドレスポンスしやすいキャッチーさがキモにありつつ、スラッシュの硬質な切れ味と少しばかりの泣きのドラマチシズムも加味されてる感じで、一発で血を滾らせる痛快な演奏でありました。 MC では最近話題のテクノブレイクに言及し 「オナニーは一日10回まで!」 との名言を残しつつ (笑) 、ラストはキラー曲 「あんた飛ばしすぎ」 。モッシュやダイブも一層苛烈さを増すフロアをなお掻き回し、最後まで一気に爆走。短すぎる!と感じさせる充実の内容でした。


kamomekamome
本日の主役。俺もここぞとばかりに再度ガソリン投入、水も用意して前方へ詰め寄る。この日はステージ前に柵がないから最前列の客とスタッフは必死だろうなあ…。ちょうど9時頃、セッティング終了するとフロアから歓声が湧き、メンバー登場。早速フリースタイルのラップ MC をカマす向氏。ガタイの良い坊主頭といういかにもハードコアな出で立ちだけど、その目は何処か優しく、遠くの景色を見つめてるようでもある。


ライブは 「エクスキューズミー」 からスタートし、そのまま 「ハンズフリーからのお知らせ」 「この時期のヴァンパイア」 と音源と同じ流れで進行。さすが現場叩き上げ系、ライブにおいてもその爆音のアグレッション、複雑な変拍子をバシバシキメる呼吸の整合性は損なわれることなく、むしろ一層凄味を増して性急に、目まぐるしく放射される。新譜の曲を中心に 「ハミングエンバーミング」 「化け直し」 と過去曲も織り交ぜたセットリスト。円状に空いたモッシュピットはほとんど乱闘の様相を呈し、無理矢理ダイブする客が地べたに転がっては抱え上げられる。だけれどただ激しいばかりではない、朴訥とした丸みを帯びた向氏の声が朗々と歌うメロディの哀愁が、徐々に空の高みに昇っていくようなカタルシス、心の底から発せられる祈りのような真摯さを伴ってる。特にその真摯な泣きが強く出てたのが、本編ラストの 「Happy Rebirthday To You」 。イエスとノーの掛け合いのシャウトがダメ押しでフロアの熱を上げながら、そのエモーショナルな歌が強く胸を打つ。歌詞に沿ってジェスチャーを交えながら重心を低く構えて歌う向氏。その凛々しさを感じさせる姿はカリスマ的な魅力があったように思います。


早めに出てきたアンコールではシリアスさと哀愁が鋭く交錯する 「事切れ手鞠歌」 、そして本当に雪崩のような乱痴気騒ぎとなったハードコアチューン 「メデューサ」 でシメ。短い中にも彼らの持つ魅力を残すことなく出し切った、非常に格好良いライブだったと思います。終わった後もアンコールを求める叫び声が止まないフロアがそれを証明してたはず。やはりロックバンドはグダグダと頭で考える前に、最初に出した音一発で格好良いと思わせなきゃダメだ。その強烈な個性を皮膚で感じ取ることができて良かったです。