Glasser 「Ring」

Ring

Ring

カリフォルニア出身、 Cameron Mesirow によるソロユニットのデビュー作。


宇宙遊泳。ニューウェーブのチープな質感も手中に取り、空間的に配置されるエレクトロニクスは躍動的なトライバル感覚に溢れ、近未来と原始が交錯するような奇妙な音世界。そして Cameron 本人のヴォーカルは艶やかに伸び、深遠な音響処理を纏って大きな翼を翻すように、スピリチュアルなムードすら漂わせて木霊する。こう書くとすぐさま連想されるのは Bat for Lashes 。緊張感や統一性といった点では向こうに譲りますが、こちらはもっと奔放な遊び心がある。どこぞの部族の謝肉祭のような陽性のムード、オリエンタルな優雅さも楽曲によっては感じられ、キッチュかつ多面的。そういったある種の軽さを持ったトラックに対し、ヴォーカルは一貫してミステリアスな翳り、重みを帯びており、場面によってはその歌とトラックのガジェット感が気にかかることもある。ひょっとしたらこれも狙いかも。いずれにせよ楽曲が示す 「ここではない何処か」 感は魅力的。奇矯なヴォイス・パフォーマンス、多重コーラスも印象的な 「Apply」 「Home」 など、現在のブルックリン勢ともリンクするインテリジェントな前衛ポップ。


Rating: 7.2/10
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