LUNA SEA 「STYLE」 「SHINE」 「NEVER SOLD OUT」 「LUNACY」


LUNA SEA 祭りのラスト。後期に発表された4枚です。



STYLE(DVD付)

STYLE(DVD付)

1996年発表の5作目。


結成以来模索していた LUNA SEA としてのサウンド「MOTHER」 で一度集大成を見せたと思うのですが、彼ら自身はそれに飽き足らずさらなる挑戦を続けていきます。全体的にへヴィな厚みが増しているのと、演奏/アレンジにおけるトリッキーな実験性もそこかしこに仕掛けられており、そういった変化からダークな凄味が強調され、なおかつアンサンブルには余裕が生まれてきたという印象を受けます。不協和音スレスレのノイズの中で暖かな愛を歌う 「WITH LOVE」 。前作の 「LOVELESS」 と対を成すタイトルを同じオープナーに持ってきたのは偶然じゃないはず。そしてドライブ感のあるギターリフで攻める 「G.」 、5拍子の変則リズムで不穏なムードを展開する 「RA-SE-N」 、それまでのムードを一転させる一大バラード 「FOREVER & EVER」 、ノイズコラージュを散りばめた実験曲 「1999」 、そして終盤に固められたシングル曲の連打、ラストは彼らが元来持つディープな神秘テイストをさらに開拓する 「SELVES」 。こちらをルナシー最高傑作に挙げるファンも多いですが、それも納得の充実度。より一層聴き応えの増したサウンドに進化した名盤です。


Rating: 10.0/10



SHINE(DVD付)

SHINE(DVD付)

1998年発表の6作目。


1997年はメンバー各自がソロ活動に明け暮れた年でした。その経験が良くも悪くも、本当に 「良くも悪くも」 反映された作品だと思います。誰の経験かというと主に隆くん。ポップシンガーとしてバンド本隊以上にバカ売れしてしまったためか、以前の陰り/狂気を仄かに帯びた 「RYUICHI」 のオーラは消し飛び、オープンでスウィートな 「河村隆一」 としての歌唱をそのまま引き継いでしまっていて、その変化が当時のファンの間でも激しく賛否両論でしたね。でも今聴くと違和感は意外にそこまで強くないんですよ。単に自分が慣れただけかもしれませんが、ノイジーな厚みとクワイアの聖性が混ざり合う 「NO PAIN」 、風通しの良い柔らかなバラード 「BREATHE」 といった佳曲もあったり、セルアウトの変化は決してマイナスばかりではない、新たな側面を見せてるとも受け取れます。ただ他のメンバーのソロ活動はなんだったの?という思いも激しくある。各々の趣味嗜好がダイレクトに反映された作品を作った反動か、 「LUNA SEA」 という存在を相対化してしまってるようなバンドサウンドの無難さ。あと単純に曲が冗長で練り込み不足なところもあるし、やはり弱点の方が目立つか。


Rating: 5.4/10



NEVER SOLD OUT

NEVER SOLD OUT

過去のベストテイクを抜粋した、初の2枚組ライブアルバム。


こないだのライブ見たときも思ったけど、彼らが理想とするサウンドは音源の時点で完成してしまっていて、ライブは基本的にそれの忠実な再現という感じ。 「音源とライブは別物」 と考える御仁からすれば彼らはライブバンドとは言えないかもしれませんが、その再現だってここまで完璧主義な美意識に貫かれてたら唸らされますよ。確かな演奏力に支えられた超タイトなアンサンブル。特に真矢のシャープなドラミングがバンドの一番の要だと思うのですがどうでしょうか。中身は編集によってひとつのライブの流れのように構築された、当時の彼らにとってのベストなセットリストとなってますが、初期の頃はさすがに粗削りな若さを感じるけど、こうして並べて聴いても違和感をほとんど感じないのは彼らの歩みがブレてない証拠ですね。隆一の MC も昔から変わらないし (笑) 。また 「SHINE」 の曲はツアーを経て成長したとのことで、確かに場数を経て獲得したグルーヴの強さが発揮されてると思います。 「ANOTHER」 「UP TO YOU」 などはこちらのテイクの方が断然良い。最近 SLAVE となった方々も押さえておきたいところ。


Rating: 8.0/10



LUNACY(DVD付)

LUNACY(DVD付)

2000年発表の7作目。現時点での最新作。


ひり付くような痛みを感じる。期限なしのレコーディングに臨み十分な時間をかけて作ったとのことで、本人たちにとっても産みの苦しみがあったのかもしれません。ギターサウンドはザラついたオルタナティブな歪みを増し、 「Sweetest Coma Again」 「KISS」 では DJ KRUSH をゲストに迎えてミクスチャー由来のファットなグルーヴを目指した新境地。その一方でシングル曲の 「gravity」 「TONIGHT」 では従来の魅力をさらに成熟させた面もあり。いずれも強化されたバンドの骨格とソフィスティケイトされた音像によって、以前の耽美テイストも表情を変えて新鮮に響いてくる。このチャレンジングな変化はもちろんバンドとして前向きなものではあるし、ミクスチャー路線が中途半端な付け焼き刃には終わってない充実した内容に仕上がってると思います。しかし 「MOTHER」 や 「STYLE」 で作り上げた自らの王道を敢えて壊し、新しい領域へ突き進もうとする、苦難の果てに完成させたその 「苦難」 が滲み出てる気がする。それは悪く言えば余裕がない、聴いてて息の詰まるような感じというか。そしてバンドは終幕へ。


Rating: 7.8/10



以上。昭和生まれのオッサンなので基本的に初期〜中期大好き脳なのですが、 「MOTHER」 「STYLE」 の頃はセンス、テクニックともに充実し、メンバー5人が均等なイニシアチブをとった正五角形が限りなく大きく広がった、バンドとしての頂点だったと思います。しかしその完成されたバランスが檻になってしまわないように、歪になりながらも変化することを選んだ後期も、それはそれで興味深い。終幕から10年経って本格復帰した彼らがどういう路線で来るのか期待と不安が入交、といった感じでルナシー祭りこれにて終了ー。もうルナシー充どころじゃないわ。ぼちぼち他の聴く。


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