James Blake 「James Blake」

James Blake

James Blake

ロンドン出身のアーティストによる初フルレンス。


これは 「歌」 のアルバム。昨年話題になっていた EP 数作はネット上でさらっと聴いた程度ですが、そこでダブステップ系の人だという認識を固めていたので、正直な所ここまで繊細なメロディ、歌を聴かせてくれるとは思わなかった。素朴ながら R&B に通じるソウルフルな深みを湛えたヴォーカル、それをダブステップ由来の深遠かつ緻密なテクスチャーに組み込むといったスタイルですが、単なる R&B とダブステの足し算には収まらない、その手法はあまりにも独特。音数を絞って隙間を大きく生かした空間の中、ブリーピーなシンセ音が膨張したかと思えば、歌声に寄り添うようにビートがささやかに散りばめられる。緊張感を煽るベース音が響いたかと思えばピアノの弾き語りに入る。そんな全く先が読めない音の組み立て方には独創性を強く感じます。その一方で内省的な翳りを纏って、感情の襞に触れる歌の優しさがひっそりと普遍的な輝きを放っており、 「Lindisfarne」 ではフォーキーな暖かみすら感じる。これはダブステップが機能的な 「目的」 から感情表現の 「手段」 へと移り変わった、その瞬間を鮮やかに切り取った貴重な記録のでは。大袈裟かなあ。


Rating: 8.6/10
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