ZETTAI-MU "spring-up" 2011 @ 名村造船所跡地


もしかするとクラブ↑イベントってこれが初めてかもしれない。


大阪を中心に活動しているオールナイト・ダンスイベント、絶対無。今回は東京の Sonar Sound と連携し、国内外の重鎮から若手まで非常に濃いメンツを揃えてきました。まだ少し肌寒い春の夜は深く深く更けていきます。


会場の名村造船所跡地は周りが工場だらけで夜は人気がほとんどない、えらい辺鄙な場所にあるんだけど、夜通し大音量を鳴らせてそれなりに広い場所、っていう所では確かに最適ですね。まさに 「跡地」 な、廃墟を改造してフェス仕様に仕立てたなかなか面白い場所。そして灰パーカにジャージと寝間着同然の格好で臨んだ俺ですが、周りがオシャレさんばっかりで身の縮まる思い…。いかんともしがたい。別に良いんだライブの服装なんて動きやすさ重視が定石だろ。メシとアルコール投入してダラダラしながら目当てのアクトに備える。


toe
お久しぶりトーさん。次のアクトがミトなので参加するのかなと思ったけどそれは無し。ゆらりと酒飲みながら現れ、 「孤独の発明」 「I dance alone」 とライブ定番の曲を披露。基本的にいつもの彼らではあるのだけど、何だか今日は今まで見た中で一番良かったかもしれない。リリカルな美しさ/緩やかさと、感情を露わにして弦を激しく掻き鳴らす荒々しさ、またはダンサブルな躍動。そしてサポートのキーボードやエレクトロニカ方面へのアプローチはミステリアスな深みを与え、 「グッドバイ」 での肩の力の抜けた歌声は寂寥を引き立てる。そういった様々な感情/表情が、彼らの演奏が生み出すひとつの波に統合されていく。現時点での最新作 「For Long Tomorrow」 からの曲も充実したアンサンブルの中にすっかり消化され、より豊かな流れを作っていました。やはり 「グッドバイ」 は山嵜氏が歌った方が良いと思うのだよな。土岐さんは巧すぎる。総じて非常に良かったです。


Flying Lotus
本日の目玉というだけあってすげえ人。今回のイベントって基本的に会場内にスタッフがいないもんで、どれだけ人が押し寄せようが入場制限とかしないんですよね。本当に後ろの方でみっちりひしめき合ってて、正直見てるだけでも体力的に辛いものがあった。しかしそれを差し引いても、今回のライブは素晴らしかったと思います。


この日は中心人物の Steven Ellison と、ゲストとしてベースに Thundercat 、キーボードに Dorian Concept のトリオ編成。どちらもアルバム 「Cosmogramma」 に参加していましたね。スティーブンは何故か亀仙流道着に身を包み、 「かーめーはーめー波ー!」 コールアンドレスポンス。えーそういうノリ?演奏中も身体を大きく動かしてオーディエンスを煽るなど、もっとナーバスで気難しいイメージを勝手に抱いていたのですけど、意外にフレンドリーでオープンな姿勢。そんで途中スト2の声ネタを挟んだりとか、若干ヲタ気質 (笑) 。


演奏の方は、音源でも見られた不規則で歪なビートを組み立て、楽曲の形を崩してシームレスに繋ぎ、各々が奔放でありながらひとつの流れを作り出すというもの。しかしどれだけリズムパターンが複雑でも、即興かとも思えるフリーキーな展開に突入しても、フィジカルな即効性がほとんど失われないのが凄い。今回のライブでの一番の発見は、 Steven Elison は根っからのパーティー野郎なのだなということ。インテリジェントで実験的な手法が盛り込まれていても、それは客を踊らせる、楽しませるというプリミティブな目的の下にあり、革新性を持ちつつもその軸はブレない。彼にとっては革新性というより 「遊び心」 なのかも。流麗なキーボードと弦をアグレッシブに軋ませるベースのサポートもあり、絶え間ないコズミック・サウンドの波を自在にサーフする、そのパフォーマンスは実に痛快でありました。特に加速度をガンガン増していく 「Parisian Goldfish」 、そこからレディへの 「Idioteque」 を挿入する流れにはひたすら興奮。


そしてラストは 「Pickled!」 。この曲もベースの凄まじさが際立つ。ドラムンベース、ヒップホップ、 IDM 、そしてジャズに至るまでの音楽要素がビートの中で一つに溶け合う、彼のセンスと熱量がひしひしと伝わる、大満足のアクトでありました。


Kode9
この日のもう一つの目玉である Battles とモロ被りだったので悩んだのですが、現場におけるダブステップというものを一度聴いてみたいという思いでこちら、 Hyperdub 総帥であるところの Kode9 へ。最近はダブステップも細分化がさらに進んで一言では括れなくなってきてると思うのですが、総帥の鳴らす音はどうか。確かにダブの深遠さ、ミステリアスな浮遊感は感じられましたが、それ以前にビートがバッキバキのガチアゲでございました。4つ打ちからステップへとパターンを切り替えつつ、唸るベースとハイスピードの縦ノリグルーヴでダンス修練。そっちがそうくるならこっちもそれ相応の姿勢で臨みます、という感じで体にムチ打ってはしゃぐはしゃぐ。ダブステってこんなんで良いのか?もっと内省的な雰囲気モノかと思ってたけど、楽しければ何でも良いか。


DRY & HEAVY
9年ぶりの復活を果たしたドラヘヴィ。その間待っていたファンも多かったようでフロアは満員でした。この日はオリジナルメンバーの秋本武士と七尾茂大、そしてゲスト DJ に絶対無レジデンツの KURANAKA 1945 を迎えたトリオ編成。


一般的にレゲエと言えばリゾートに似合う、ユルくてハッピーな音楽というイメージだと思うのですが、彼らの解釈するレゲエは鬼のようにへヴィ。時折 DJ が霞みがかったような上モノを乗せる以外は、脳髄を揺らす太さで簡素なフレーズをひたすら反復するベースと、強烈なダブ処理を施して一打一打を鋭く響かせるドラムス、それ以外に何にもない。かつては LIKKLE MAI のヴォーカルなどメロウな装飾もそれなりにありましたが、今回はもう完全にグルーヴしか残ってない。むしろ 「それ以外に何か要るか?」 とでも言わんばかりの確固たる自信、矜持がメンバーの演奏から感じられました。これはもう酒飲んでグラグラしながら聴くのが正解。ストイックでドラッギー、まるで酔拳のようなグルーヴに身を任せるのがただただ心地良い。強靭すぎるリズム隊の快楽にヤられながら夜はさらに深くなっていくのでした。


ドラヘヴィ終わったくらいでもう体力限界。フロアでうずくまって寝てたら知らん間に朝が来てたよ。始発に乗る朝5時が気持ち良いってなー。やっぱりオールはキツいけど、こういうおいしいイベントはマメにチェックしときたいですね。