cyclo. 「id」

Id

Id

池田亮二と Carsten Nicolai によるユニットの10年ぶり2作目。


シリアル・エクスペリメンツ。一切の贅肉/色味を殺ぎ落とした上で、人間よりも虫が先に反応しそうな可聴域外の波長まで封じ込めたノイズ音響作品です。脳細胞にダイレクトに突き刺さるような鋭さで、神経質なパルスの飛礫が空間的に配置され、緊張感がピンと張りつめた静寂の中で鳴らされる。ノイズ/パルスが無軌道に荒れ狂う動パートに移行しても (#02、#05、#09などが特に強烈) 、その冷徹なまでの 「静寂」 は常に隙間に流れ、アッパーな快楽ではなく蛇に睨みつけられた蛙のような神経の痺れを真っ先に覚えます。音の向こう側に感情や意味を持たせることを許さず、ただただ聴き手の感覚を研ぎ澄ませる。聴いててすぐに連想されるのは AutechreAphex Twin といった WARP 勢ですけども、場面によっては恐怖すら感じるディストピア的な冷徹さはそれら先人に負けず劣らず。 「ヴィジュアル・アートと音楽の新しいハイブリッドの創造を目指す」 のがコンセプトとのことで、映像と合わせて聴くとより効果的なトリップ感覚を得られるかもしれません。そしてその先鋭性、実験性こそが彼らの 「id」 なのだと。


Rating: 7.2/10
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