Marissa Nadler 「Marissa Nadler」

Marissa Nadler

Marissa Nadler

ボストン出身のシンガーソングライターによる、2年3ヶ月ぶり5作目。


新たにプライベートのレーベルを作り、セルフタイトルが冠せられた今作。もしかしたら彼女にとって初心に帰る意味合いがあったのかもしれません。趣向を凝らして比較的ヴァラエティに富んでいた前作 「Little Hell」 から、再びアコースティックギターの弾き語りというシンプルなスタイルに立ち返り、装飾は最低限に留めて真っ直ぐに歌を聴かせる作り。しかしそれだけでも十分と思わせるほど、彼女の歌声には言霊のようなものが宿っている気がします。 「なぜ太陽を見るとあなたを思い出すのだろう」 「雨の中、手をつないでた」 ささやかだけど無常な日々、その中の出逢いと離別、切なさや憂いといった感情の機微を、柔らかく包容力のある歌が紡ぐ。しかし歌声は優しいのに、その裏側には気を抜くと背中を貫かれそうな緊張感、薄ら寒い業のようなものがゆらりと潜み、その仄かなダークネスが儚さ/美しさを一層際立たせ、心を掴む。 「Baby, I Will Leave You in the Morning」 では憂鬱がアトモスフェリックに深まって窒息しそうな感覚に陥るし、 「Wedding」 では幸せな挙式のはずが進退窮まった果ての末路みたいに映るのは何故でしょうね。真摯ゆえ?


Rating: 7.8/10
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