BUCK-TICK 「COSMOS」 「SEXY STREAM LINER」 「SWEET STRANGE LIVE DISC」 「ONE LIFE, ONE DEATH」 「ONE LIFE, ONE DEATH CUT UP」


B-T 祭りの3日目。90年代後半〜00年代に入ります。



COSMOS(紙ジャケット仕様)

COSMOS(紙ジャケット仕様)

ビクター時代のラストとなる1年ぶり9作目。


「太陽」d.t.d.」 「69」 を俺は勝手に暗黒3部作と呼んでるんですが、その3枚で密度の濃いこと散々やってピークに達したのか、今回は全体的に幾分か肩の力の抜けた雰囲気を感じます。ポップで軽快なメロディを中心に立てた楽曲が多いためそういった印象に繋がるのかもしれません。ただ当然 B-T が単なるポップになるはずがなく、ポップネスに泥を塗りたくるようにギッチギチのノイズも大放出。先行シングル 「キャンディ」 が良い例ですが、極端に歪んだバッキングとメロディの明快さを組み合わせ、美醜のコントラストをハッキリさせてドギツい鮮やかさを打ち出す狙い。またエレクトロニカを取り入れてミステリアスな浮遊感を醸し出す 「Tight Rope」 など、バンド (というか今井ちゃん) の興味がヘヴィロックからテクノ/エレクトロニカに移行してるのが分かる。そんで今回のハイライトはラスト2曲。刹那的なスピード感にノイズを纏わせ、ラストの展開に意表を突かれる 「Ash-ra」 と、これまでにない慈愛、包容力を感じさせるタイトル曲 「COSMOS」 。彼らの挑戦はまだまだ終わらない。


Rating: 8.0/10



SEXY STREAM LINER

SEXY STREAM LINER

マーキュリーに移籍し、1年半ぶりとなる10作目。


俺が初めて聴いた B-T のアルバムが実はコレ。今作でも生音と打ち込みの融合を追求しているわけですが、前作の厳ついノイズモードからまた視点を変え、エレクトロニカ的音響性やドラムンベースを導入してスタイリッシュに仕上げた流線型サイバーサウンドに変貌しています。冷徹なスピード感で低く迫る 「タナトス」 「ヒロイン」 、まるで後の 9.11 を予言してたかのような 「無知の涙」 、仄暗く幻想的な音世界を描く 「螺旋 虫」 、背徳極まれりな SM 賛歌 「囁き」 、今井ちゃんキレッキレの扇動ロッキンエレクトロ 「MY FUCKIN' VALENTINE」 など。立体的なサウンド設計に重きを置いた結果メロディと歌詞はよりマニアックで難解になり、全体的にも抑揚が抑えられて陰鬱なムードが通底してるためファンの間でも賛否が分かれておりますが、個人的には割と肯定派。基本的に音を詰め込みたがる彼らにしては程良く隙間が生かされてるし、この 「血の通わなさ」 は B-T の長いキャリアの中でも特異なムードを放ってると思う。ちなみに言うとジャケットは今作が一番好き。


Rating: 7.8/10



Sweet Strange Live Disk

Sweet Strange Live Disk

「SEXY STREAM LINER」 ツアーの内容を収めた、キャリア初となるライブ盤。


SSL」 が打ち込みの占める割合が非常に高いアルバムなだけに、ライブではどう再現されるのか。結果としては単純に音源通りの同期を鳴らしてるわけですが、ライブテイクではやはり同期よりもバンドサウンドの厚みがグッと前に出て、クールに徹していた音源とはまた違ったアグレシッブな熱量を発揮しています。初期のヒット曲や定番曲は敢えて省き、あくまで 「SSL」 の世界観を構築するという所に重きを置いたセットリストで、オリジナル盤と比べても遜色ないトータリティを確保。 「ヒロイン」 「MY FUCKIN' VALENTINE」 などはライブ映えするだろうなと思ってたけど、妖しいベースラインが際立つ 「迦陵頻伽 Kalavinka」 や、ノイズ/不協和音が空間の中で反響する 「CHAOS〜キラメキの中で…」 といったズブズブ沈むミドルパートの構成にはゾクゾクさせられる。またアンコールで放たれる 「キャンディ」 は、ギチギチのノイズが無くなったぶんえらく可愛らしく朗らかなポップ曲に。曲によっては以前のハードロック色も残ってるのだなと、色々と再発見も多い良作。


Rating: 7.6/10



ONE LIFE、ONE DEATH

ONE LIFE、ONE DEATH

BMG に移籍し、3年ぶりとなる11作目。


生と死。これは90年代に入ってから彼らの歌詞における大きなテーマとなっていましたが、今作では死に由来するダークネスを超え、生の力強さを提示するようになりました。肉欲渦巻くゴージャス&アッパーな4つ打ちトランス 「Baby, I want you.」 、スピードと浮遊感が美しい陶酔を誘う 「GLAMOROUS」 、 「個性がインフレ頭打ち」 リリックが超クールな怪曲 「細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM」 、自らの弱さを激情として露わに曝け出す 「女神」 、そして誇らしく咲く花の強さを描いた 「RHAPSODY」 と、儚く散ってはまた芽を吹く花の美しさを描いた 「FLAME」 。特に 「FLAME」 は B-T の中でも五指に入る、あまりにもリリカルなロッカバラードの名曲。音的にはバンドサウンドのダイナミズムが復活し、ノイズ/インダストリアルからエレクトロニカまで渡り歩いた実験の数々がひとつに消化された、ある種の集大成といった印象を受けます。10曲全てに強烈な個性と役割があり、ゼロ年代における彼らのモードを早くも提示した名盤。


Rating: 9.0/10



ONE LIFE,ONE DEATH CUT UP

ONE LIFE,ONE DEATH CUT UP

「ONE LIFE, ONE DEATH」 ツアーの内容を収めた2枚組ライブ盤。


メインとなるアルバムの狙いが 「SSL」 と 「OLOD」 では明らかに別方向のため、セットリストが違えば演奏の質感、ムードも前回とは違います。ライブならではの非常にエネルギッシュな熱量、躍動感が詰め込まれており、客の歓声も数割増しで臨場感満点。序盤で放たれる必殺曲 「唄」 や 「DOWN」 といったヘヴィナンバー、あっちゃんの呻きも絶好調なロックンロール 「Death wish」 にますます力強さが加わった 「Baby, I want you.」 、さらには 「PHYSICAL NEUROSE」 なんていう初期レア曲も勢いに加速度がついてザクザク刺さり、前回とは対照的なドライブ感に満ちた演奏が非常に痛快。しかし聴いてて思うのはあっちゃんのヴォーカリストとしての力量の凄まじさ。時にはまるで悪魔が憑依したような狂気を発し、なおかつセクシーな色気、シアトリカルな深みを持った、アルバムテーマの 「生と死」 を歌うに最も相応しいと思われる歌声。ライブは LIVE であり生きることであるので、それが刹那的であればあるほど歌の魅力は一層凄みを持って迫ってくる。その断片。


Rating: 8.6/10


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