Serph 「Winter Alchemy」 / Reliq 「Minority Report」

Winter Alchemy [NBL-205]

Winter Alchemy [NBL-205]

東京在住の男性によるソロユニットの、7ヶ月ぶりのリリースとなるミニアルバム。


タイトルにもある通り今回のテーマは冬。様々なクリスマスソングのスタンダードを組み込んだ 「noel」 に始まり、細かなパルスやストリングスの音色が暗がりの中で瞬く 「twinkler」 、一転して何処か厳かな空気感を醸し出す 「VALIS」 、ゲレンデを滑走するような軽やかさで魅了する 「lumina」 など7曲。大まかな方向性は以前と変わりありませんが、生音/打ち込みを巧みに重ね合わせ、ドリーミーでカラフルな音空間を構築する彼の手法は冬の季節にこそピッタリ。コンセプトと方向性が清々しいほど綺麗に合致し、これからの季節に満ち溢れるであろうロマンスを煌びやかに演出してくれます (そして非モテには死を) 。これ聴いて思い出すのは world’s end boyfriend 「Xmas Song」 なのですが、あちらに比べてある種の毒っぽさが少な目なため良くも悪くもクセが少なく、そのぶん窓口は広く入り込みやすいとも言える。以前からのファンは納得かと。


Rating: 7.0/10



Minority Report

Minority Report

上の Serph の別名義となるユニットの初フルレンス。


Serph との一番の違いはダンスグルーヴ。夢見心地でカラフルな上モノのイメージは共通していますが、ボトムには4つ打ちビートやブレイクビーツといった明確な地面があり、程良くフィジカルな躍動を伝えてくる。随所でフォークトロニカ的、あるいはダブステップ的な意匠も見られ、すぐに連想したのは昨年の傑作 Four Tet 「There Is Love In You」 、もしくは Gold Panda 「Lucky Shiner」 あたり。特に 「Mini」 などはスムースかつフックの効いた構成で否応なしにその音世界へと引き込まれるし、スリリングなスピード感のある 「Rushhour」 、毒気の強いノイズをふんだんに塗した 「Distance」 と曲目が進むほどに自由度も増大。しかし本体の Serph と比べてそこまで大きなカラーの差異がないため、いっそコレも Serph 名義でやってしまった方がよりチャレンジングな姿勢をアピールできて良かったんではないかな…という思いもある。しかしながらヴァラエティの広さとトータリティのバランスは多作にも拘らず十分に練られており、単なるオシャレなばかりではないディープな聴き応えがあると思います。


Rating: 7.8/10


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