人間椅子 「萬燈籠」

萬燈籠

萬燈籠

2年ぶりとなる17作目。


「萬燈籠 (まんどろ)」 とは満月の光。前作 「此岸礼讃」 が現実 (此岸) を基盤にした曲が多かったのに対し、今作は幻想的な世界観をテーマにした曲がメイン、とのこと。しかしどちらにせよ人間椅子の方向性にブレが生じることはありません。今作も安定の怪奇文学×津軽節×70年代ハードロック。マンネリと言えば確かにマンネリですが、オズフェストへの出演が刺激となったようで今回も十分に脂が乗っています。ずっしり重いグルーヴからプログレッシブな美しさのギターソロへ突入する 「黒百合日記」 、珍しくポップとも言える朗々としたメロディが印象的な 「春爛漫」 、グロテスクな歌詞と祭囃子の躍動が人間椅子イズムを強烈に象徴する 「ねぶたのもんごりこ」 、演説交えて和嶋氏ならではのエモさ炸裂の 「十三世紀の花嫁」 、壮大な希望の裏側に誇大妄想気味な脆さも感じ取れる 「衛星になった男」 など13曲。ラウド感は前作よりやや落ちる気がしないでもないけど、1曲のうちに数曲分のアイディアを盛り込むなど聴き所は多数。彼らのパーソナリティ含めてますます愛着の湧いてくるこの頃なのでした。

Rating: 7.6/10