Carcass 「Surgical Steel」

Surgical Steel

Surgical Steel

リバプール出身の4人組による、17年ぶり5作目。


今作を聴くに当たって Carcass の過去作を頑張って聴き漁ってみましたが、想像してたものと結構違う部分もあったりして驚きました。初期の頃のバンド名よろしく腐臭漂う下水道グラインドコアは聴く前の先入観と泣けるくらいピッタリ合致するものでしたが、曲が長尺になってプログレッシブな構築性を目指した 3rd 、激しさを殺さないまま叙情的な美しさも取り入れてグッと洗練された 4th 、オーセンティックなハードロックへ接近した 5th と、90年代に入ってからはかなりドラスティックな変遷を遂げていたのですね。どの時期が一番好きかと言われると自分は 4th になるのですが、この復活作はそんな人間にとって最も期待通りの作品と言えるのではないでしょうか。冒頭 「1985」 のあまりにも劇的で美しいリードギター、それを瞬時に粉砕する次曲 「Thrasher's Abattoir」 の仁義なきブルータリティ。その後もメロディック・デスメタルの神髄とも言える美と醜の鬩ぎ合いが続き、その徹底した苛烈さには思わずこちらの血肉も沸々と熱くさせられます。長い年月の中で彼らが経てきた道程を濃密に凝縮した、 Carcass の集大成とも言える内容かと思います。

Rating: 8.2/10