MANNERS 「Facies」

Facies

Facies

見汐麻衣 (埋火) によるソロユニットのデビューミニ作。


プロデューサーが石原洋、エンジニアが中村宗一郎、さらにはベースに亀川千代まで参加という、もうゆらゆら帝国を意識しない方が無理という制作陣なわけですが、じゃあ音もゆら帝そのままかというと、確かに共通する部分もありますが意外にそうでもない感じ。1曲目 「暗号」 はパーカッションが小気味良いグルーヴを醸し出しつつ、8分に渡ってジャズ/フュージョン風のセッションが繰り広げられる濃密な曲。この深い夜を思わせるサイケなムードはやはり後期ゆら帝や最近のオウガを彷彿とさせるところがありますが、見汐麻衣の歌声は柔らかな輪郭と澄んだ透明感があり、演奏陣のねっとりした毒気に侵されることなく素朴な魅力を見せています。続く表題曲 「Facies」 は微妙に相対性理論を思わせるシティポップ調だったり、 「朝の終わり」 はドローン的な音響効果がさらに陶酔度を高めてたりと、程良く緩急をつけながらも全体のシックな翳りは常に統一されており、すでに確固たる音世界を確立しています。あと体温の低さや茫洋とした感覚が、個人的には90年代の中谷美紀につながる部分もあるような気が。前述の 「暗号」 なんか特にそう思うし、面白い存在だなと。

Rating: 7.6/10



MANNERS 「暗号」 (Edit Version.) - YouTube