Marissa Nadler 「July」

July

July

ワシントン出身のシンガーソングライターによる、2年7ヶ月ぶり6作目。


7月と言われても今2月だし、内容も全くもって夏らしくないという。今回プロデューサーを務めるのは、かつて Sunn O))) や Earth などの極道ばかりを手掛けてきた Randall Dunn なる人物。もちろん彼女がいきなりドローンメタルの領域に突っ込んだわけではなく、それらのバンドに共通するアトモスフェリックな音作りを導入したという意味で、これは正しく鬼に金棒のタッグなわけです。これまでも聴き手の首を真綿で締めてくるようなホーンテッド・フォークソングを作り続けてきた彼女。その柔らかく繊細なメロディ/ハーモニーであったり、アコギやキーボードなどの音色にもナチュラルな音響処理が施され、歌を引き立てる形で音全体がより一層調和してます。その残響音が醸し出す緊迫感にはある意味ドローンに通じるものがあったり、 「Anyone Else」 では禍々しい重低ノイズもひっそりと挿入されるなどプロデューサーの細かな技が随所で見られます。方向性としては今までと大きく外れるわけではないですが、それにも拘わらず常に新鮮な衝撃を与えてくれるのは、やはり彼女の歌の持つ密度、説得力が作品毎に更新されているからでしょう。納得の充実作。

Rating: 8.4/10