宇多田ヒカル 「First Love -15th Anniversary Edition-」

1999年に発表されたデビュー作の15周年記念リマスター盤。


デビュー当時から彼女の名前はもちろん知っていましたが、自分がこのアルバムをちゃんと聴いたのはそれから何年も後になってからのことでした。この世ならざるV系の世界にどっぷり浸かっていた高校生の自分には、この作品は10年早かったんだなと今振り返っても思います。ヒップホップ/ R&B を基調とした当時のコンテンポラリーなトラックは、全く経年劣化してないかと言われれば正直ノーと言わざるを得ません (「甘いワナ〜 Paint It, Black」 あたり特に) 。しかしながら男女の間に生まれる感情の機微を、彼女特有のフランクな流暢さで絶妙に捉えた表現は今聴いても説得力抜群。当時まだミドルティーンであったにも拘らず、これだけ大人びた情感/情景を歌っても空疎な感が全くしないのには改めて舌を巻く。そんな歌詞をなぞる歌唱力も若さ故の未熟さみたいな部分がほとんどなく、すでに洗練/成熟の域。あまり天才という言葉は好きではないけど彼女の生まれ持ったセンスは常人とは確実に一線を画しているし、様々なものを感受しながら生活する時間の密度も段違いだったのでしょうね。周囲に及ぼした影響やセールスを考えても、最低でもこれくらいの点数だよなと。

Rating: 9.5/10