坂本慎太郎 「ナマで踊ろう」

ナマで踊ろう(初回盤)

ナマで踊ろう(初回盤)

2年半ぶりとなるソロ2作目。


前作 「幻とのつきあい方」 では単純に良いと言える歌モノを目指してた印象があったので、今後もそんな方向性で行くのかなあ…と思ってたところのコレですよ。これはマズいんじゃなかろうか。スティールギターやコンガなどの音色を取り入れたアンサンブルは前作からさらに甘美さを深め、小気味良いファンクネスと同時にどっぷりサイケな音像が微睡みにも似た心地良さを醸す。 AOR /ソフトロックの腰砕けなスウィート感を重視した点で言えば地続きの要素も多くありますが、場末感バリバリの郷愁と退廃の入り混じるムードが一種異様な毒気を発しています。インテリジェントな艶めかしさがあり、コミカルながら掴み所のない不気味さが根底に流れてる。そして歌詞もまた強烈。明らかにドラッグや宗教を題材にした 「スーパーカルト誕生」 「めちゃくちゃ悪い男」 、表題通りのディストピア世界がのほほんと綴られる 「あなたもロボットになれる」 など、楽曲が脱力しまくりなぶんこの歌詞の冷徹さには背筋が凍るような感覚を強く植え付けられる。非ロック路線に向かってもこれだけ妖怪じみた作品が出来てしまうのだから、この気持ち悪さはもはや業としか言いようがないですね。

Rating: 8.7/10