Thom Yorke 「Tomorrow's Modern Boxes」


ソロ名義としては8年2ヶ月ぶりとなる2作目。


最近の RadioheadAtoms for Peace でも基本的には同じ流れを汲んでおり、作品を重ねるたびにどんどん素っ気ない音になってきていますが、今作も然り。従来の神経質とも言える精緻さを保った IDM /エレクトロニカから、昨今のポスト・ダブステップにも通じる実験的テクスチャー。バンドからソロに移行したことでより内省的でシンプルな、彼のコアの部分がそのままさらりと表れたようなサウンドです。それでも彼は基本的にメロディの人。自らの憂いと優しさを湛えたヴォーカルをフィーチャーし、ひたすらダークで無機質な雰囲気が流れている中でも、その声は冷たい水のように身体に浸透し、スウィートな心地良さと同時に意識を覚醒させる作用を持っています。その憂いが比較的強めに表れた 「Guess Again!」 「Truth Ray」 などは最近のインディ/オルタナティブ R&B を意識したような仕上がりだったり、ミニマルな反復を続けて恍惚感を醸し出す 「There Is No Ice (For My Drink)」 は The Field + Burial といった塩梅。最近の先鋭的な流行を捉えつつ、自らの声に還元する手法は相変わらずの冴えですね。心を鎮めたい夜にはちょうど良いかと。

Rating: 7.0/10