Björk 「Vulnicura」

VULNICURA

VULNICURA

3年3ヶ月ぶりとなる9作目。


本領発揮。アルバム毎に革新的な変化、挑戦を続けていた彼女ですが、今作は 「Homogenic」 や 「Vespertine」 の頃の、自分にとっては最も馴染み深いビョークのイメージに回帰しています。 Arca を共同プロデューサーに迎えて制作されたダークで先鋭的なエレクトロビート、悲愴感や荘厳さを湛えたストリングス、そして本人のヴォーカル。楽曲を構成するのはこの主要な三本柱のみという、彼女の表現のコアな部分を剥き出しにしたような内容。サウンド自体も可聴域ギリギリのラインで鳴っているベースラインが凄まじい緊張感を発しているのですが、それ以上に感情の趣くままに、大きな翼を翻すようにして歌うビョークの歌声からは、かつてないほどにヘヴィな印象を受けます。ストイックに研ぎ澄まされ、厳格に方向性が統一されている楽曲群だからこそ、その歌声の神聖さ、自由さが際立っているように思います。濃密な空気感は全く中弛みすることなく、むしろ The Haxan Cloak も参加した中盤 「Family」 では凄絶極まりないヘヴィネスが襲い掛かり、思わず身震いしてしまうほど。固く身を振り絞って落とされたエモーションの一滴。あまりにも尊い

Rating: 8.8/10