吉田一郎不可触世界 「あぱんだ」

あぱんだ

あぱんだ

ZAZEN BOYS のベーシストによる初のソロ作。


軽妙なラップやシンセサウンドの実験的な組み方であったり、もちろんハイからロウまでを自在に這い回るベースプレイも含め、全方面において彼の秘めていたセンスが開放されているわけですが、まず印象に残るのはその才気を爆発させた凄みというよりも、ある種の空虚さ。それはザゼン本隊の 「Asobi」 や 「はあとぶれいく」 などにも通じる、アーバンで冷たく、茫洋とした雰囲気がそこはかとなく漂っていて、メロディなどにはセンチメンタルな感触がありながらも、そこへの聴き手の感情移入を安易には許さない、シュールな無機質さも同時に存在するという、シンプルなようでいてなかなか複雑なニュアンスを含んだシティポップ/エレクトロヒップホップなわけです。個人的には単純にメロディの作りがまだ弱い気がするのと、 KIMONOS なんかとの差異がそこまで明確でもないのが気にかかるのですが、それでも異形、異物の存在感は強く発揮されていると思います。大きな河を隔てた先のビル街を眺めるような、まさに不可触な宵闇の世界。

Rating: 6.9/10



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