FJORDNE 「Moonlit Invocations」

Moonlit Invocations

Moonlit Invocations

東京在住、 Fujimoto Shunichiro によるソロユニットの約4年ぶり6作目。


下敷きにあるのはジャズ。本人によるピアノは定型のフレーズに依らない即興風のタッチで、静まった雰囲気に寄り添うようにして繊細に、たおやかに鳴らされる。そこに覆い被さるようにして、打ち込みのリズムやドローンノイズが全編に塗されています。ノイズといってもこれ見よがしの凄みを発しているものではなく、ピアノの美しさを保ったまま空間の隙間を埋め尽くすアブストラクトな環境音的ノイズ。アルバム表題に冠せられた 「月光」 のタームが示す通り、鈍い光の幻想的な美しさ、あるいは妖艶さであったり、その裏側に宿る密やかな狂気も内包された音。身体の力をスムーズに抜いてくれる心地良さがありながらも、決して消毒された無味乾燥な潔癖さではなく、イマジナティブな深みを持ったポスト・ジャズとでも呼ぶべき内容となっています。 「Rejoice: Moon」 や 「Capsella」 はその洗練されたムードに素直に酔えるし、比較的実験要素の強めな 「Coenbiac」 「Behind Exquisite, Tragic」 などでは徐々に立ち昇る音響の霧に吸い込まれそうになる。アーバンかつエキゾチック、つまりは此処ではない何処かのサウンドトラック。

Rating: 7.4/10


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