Björk 「Vulnicura Strings」

Vulnicura Strings

Vulnicura Strings

ストリングスのみを用いた 「Vulnicura」 リアレンジアルバム。


彼女の音楽の三本柱と言えばヴォーカル、ストリングス、そしてエレクトロニクス。この三者は他要素に完全に馴染むことはなく、各々が確固たる存在感を放ちながらひとつの空間に無理矢理封じ込められ、その中で歪ながらも有機的なマトリクスを構成していました。その接続具合は作品を重ねる毎にどんどんアクロバティックなものへと変異し、今年の新作 「Vulnicura」 で何度目かの成熟を果たしたというわけです。そして今回のリアレンジ盤。エレクトロ要素が排除されて欠乏感が残ったかと言えばそうではなく、言わば 3P が 2P になったようなもので何処かグロテスクな美しさは変わらないまま、むしろ聴き手に更なる緊張を強いる空気の重さが際立った内容になっています。 「Stonemilker」 「Lionsong」 などは元々のメロディの神々しさが際立っていただけに大きな変化は感じないのですが、2ヴァージョンが収められた 「Black Lake」 や Antony Hegarty 参加の 「Atom Dance」 などはその前衛的な美的感覚、静けさの中に深い激情が渦巻く、その気迫にすっかり圧倒されてしまう。本編とこちら、どちらが彼女の本質により近いかということはなく、どちらも残酷で気高い。

Rating: 7.8/10



björk: lionsong (vulnicura strings version) - YouTube