人間椅子「怪談 そして死とエロス」

1年7ヶ月ぶりとなる19作目。


ここ数年の人間椅子は充実した傑作をコンスタントに連発しており、幸いそれに比例してセールスや動員も右肩上がりに上昇していたわけですが、そんな彼らの脂のノリがここに来ていよいよ極まりつつあります。心なしかいつもに増して中低音のエグ味が効き、分厚く生々しさのある音像に仕上がった今作。方向性としては今までの路線から大きく外れることはない、70年代 HR/HM の旨味渋味を多分に含み、時にプログレッシブで時にスラッシー、なおかつ和的なニュアンスに拘った安心安定の人間椅子。ただ今回アグレッシブな楽曲が大半を占め、複雑なテンポチェンジをふんだんに盛り込みながらも勢いは決して殺さず、あくまで外向きの前傾姿勢を取り続ける彼らの勢いが上手くパッケージされています。そしてアルバム表題にある怪談、死、エロスというテーマ。これらは今作のみならずデビューから一貫して彼らの主幹を成す要素でしたが、肉感的な演奏から浮かび上がる印象は極めてポジティブな生そのもの。死を見つめて生を際立たせる、この逆説的なエネルギーの発散こそ彼らの表現の真骨頂ではないでしょうか。門外漢の人もここからおいでませ。

Rating: 8.6/10



人間椅子「恐怖の大王」 (Ningen Isu - Great king of terror )