水曜日のカンパネラ ワンマンライブ NANIWA! @ 心斎橋BIGCAT

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「女の人で AV 見てる人います?」


様々なメディアに露出したりで注目度鰻登りのカンパネラ。個人的には昨年の MINAMI WHEEL 深夜枠で見て以来、フルセットでは今回が初見となりましたが、まーやはり自由なのだ。とにかくその自由奔放さが際立っており、我々を気付かないうちに熱中させている、なんとも魔的な魅力であるなあと。


さすが売れっ子なだけにセットや演出に対するバジェットがすっかり嵩増ししており、その演出は会場に入った時点ですでに始まっていました。天井や壁のあちらこちらに張り巡らされた白い布、それはまるで何処ぞのエキゾチックな宮殿の寝室、あるいは巨大な繭の中に迷い込んだような不思議な心地にさせる。会場の BIGCAT には何度も来てますが、こんな異様な雰囲気の BIGCAT は初めて見た。そして前方には円形のスクリーン、そこに映るのはミラーボールの中で静かに胎動を続けるコムアイの幼虫(のようなもの)。開演前 BGM でも心音がエンドレスに響き渡っており、ひょっとしてここは羊水の中なのだろうか。


そういったミステリアスな演出で挨拶代わりに度肝を抜いておき、ライブは「西玉夫」から厳かにスタート。背後のスクリーンフル活用に加え「モスラ」では神輿が出てきたり「桃太郎」ではビニールボールの中に入ったり(Wayne Coyne がやってるアレ)、その他もステージからフロア、照明エリアまでを練り歩くなど、曲毎に色んなネタを投入して常に観客を驚かせようとする、サービス精神のインフレスパイラル。そんな風に水曜日のカンパネラというお膳立てされた舞台の上で、ぽんと放り出されたコムアイはその状況に戸惑うどころか、なんとも無邪気に(しかしおそらくは周到な計算をしたたかに携えて)舞台の上あるいは人の上を軽やかに舞い踊ってみせる。その奔放さこそがコムアイの魅力であり、カンパネラというプロジェクトにとっての必須ファクターなのですね。


ただこの手の仕込みに演者も観客もそのうち不感症になってくるというのは容易に想像がつく。常にサプライズを追い求めるあまりライブが一大テーマパークと化してしまったり、本来の足場を見失ってしまっては興醒めなのである。まあ人気が上がってライブの規模が大きくなればそのテーマパーク化も止む無しではあるかと思いますが(ももクロやベビメタみたいに)、今ぐらいの距離感が演出と楽曲、そして本人のキャラクターとのバランスが綺麗に収まってると思うのですよね。このバランスを崩さずにいてほしいというのはわがままなファン心理でしょうか。あとコムアイは終盤少しバテ気味なようにも見られたし、無邪気なのは良いけどフロントマンとして詰めの甘さを隠せない所がまだある。今後は彼女自身がより演者としての存在感を強めてくれれば、まだまだこのユニットは新鮮味を保てるんじゃないかなと。


などと思いつつ終盤のキラーチューン畳み掛けにはかなり興奮させられたし、約1時間半の間まるで退屈させられることなく、気付いたらすっかり微笑ましい気分にさせられていたのでした。ゆるっとしつつ不意に格好良いコムアイの所作、その手の平で我々は悪戯半分に転がされています。彼女にかかればステージ上も観客も同じ玩具に変わりないのでしょう。


<セットリスト>
1. 西玉夫
2. ウランちゃん
3. ユタ
4. 猪八戒
5. 小野妹子
6. ライト兄弟
7. ツイッギー
8. ナポレオン
9. モスラ
10. 桃太郎
11. ディアブロ
12. ラー
13. シャクシャイン
14. マッチ売りの少女
15. メデューサ
(アンコール)
16. ドラキュラ
17. カーネル