大森靖子「TOKYO BLACK HOLE」
- アーティスト: 大森靖子
- 出版社/メーカー: avex trax
- 発売日: 2016/03/23
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
音的には前作「洗脳」での悪趣味とも言えるほどに音数を詰め込んだトゥーマッチアレンジから脱け出し、比較的風通しの良いポップロックへと洗練化。ただそれでも彼女の個性自体は変わらず、中心の歌には相変わらず胃もたれするほどの苦々しさと甘ったるさが込められています。彼女の歌とは大雑把に言えば自分自身を損なわずに生きること、喜怒哀楽すべての感情を肯定する彼女なりの人間賛歌。一筋縄ではいかない愛情の微細な揺れまで捉えようとするのでエグ味の強い表現がバシバシ出てくるし、ゆめかわいいパワフル女子の奔放な言語センスもふんだんに盛り込むので聴いてて本当にお腹が重くなってくる。そんなしんどい思いしてまで聴くなよという話ですよね。彼女が他者に対して愛と憎を持っているように、俺も彼女に対して勝手にささやかな愛と憎を持っているのです。ただ「魔法が使えないなら死にたい」の頃のドライな情景描写から、聴き手と自身の感情の擦り合わせ、「対話」へと意識が強まっているようで、彼女のエネルギッシュなエゴがより直接的にぶつかってくる感覚がある。このイタさはなかなか慣れないっすね。
Rating: 6.9/10