M83「Junk」

Junk

フランス出身、Anthony Gonzalez によるユニットの4年半ぶり7作目。

まず近年稀に見るレベルのダメジャケにずっこける。名作「Saturdays=Youth」で美しく幻想的な世界観を提示していた人がどうしてこうなった…。そして中身の方はまた、今までとは別の意味で凄いことになってます。元々エレクトロ・シューゲイザーを主軸としつつ、80年代ディスコ／シンセポップに対する憧憬が作品を重ねるたびに色濃くなっていましたが、そのノスタルジー主義が今回はいよいよ筋金入り。スウィートで切ないメロディはますますダイナミックに拓かれたものとなり、絶妙に MIDI 音源風のチープな音作りや奥ゆかしいリバーブ処理など、細部に至るまで徹底して80年代フレイヴァー大放出。「Do It, Try It」や「Go!」といった真っ当なポップ曲はまだしも、途中のフュージョンインスト「Moon Crystal」なんかは聴いていて本当に目が点になった。近所のスーパーの BGM じゃねえんだから。もはや原点回帰どころかエミュレーターかというレベルで高い再現度を見せる懐古サウンド、そしてそこに冠されたアルバム表題。全くもって不可解だ。過去に想いを馳せすぎて頭のネジが緩んできてることが伺い知れる怪作です。

Rating: 6.4/10

M83 - Do It, Try It (Audio)