ゲロゲリゲゲゲ「燃えない灰」

燃えない灰

燃えない灰

山之内純太郎によるソロユニットの15年ぶり17作目。


ゲロゲリゲゲゲに関しては「昭和」と「パンクの鬼」の知識しかなくて、今回の新作でも何が飛び出すか分からない(けど何にせよロクでもないのは確実)という感じで戦々恐々としていたのですが、まさかこれほどシリアスな作風になっているとは思いませんでした。酔っ払いだか浮浪者だかの喚きがシュールな狂気を帯びる「西河の果て」、鼓膜を粉砕するハーシュノイズ大炸裂の「ゲロゲリゲゲゲ」、完全なる虚無、死の世界を描いた前衛的ドローン「敗残兵士達の海」、そして何処かノスタルジックな哀愁を匂わせる「最期の調律」。どの楽曲もエクストリームな実験性が際立っていますが、ニタニタ気持ち悪い変態的/露悪的な面ばかりが先行していた過去の作品と比較して、今作は山之内純太郎の目線から見たリアルを生々しく切り取ったかのような辛辣さ、エモーショナルで真摯な感情の発露という印象を受けます。時には爆音で、時には静寂で空間を一色に塗り潰す、その楽曲からは一切の人間味を感じませんが、それでも何故か深い意味を孕んだイマジナティブな音楽だと感じられてしまうのは、それも彼の悪意の術中にまんまとハマっているだけでしょうか。

Rating: 7.0/10