toddle「Vacantly」

Vacantly

Vacantly

田渕ひさ子を中心とする3人組の、約5年ぶり4作目。


「空虚」とアルバム表題にはあります。内容はいつも通り飾り気のないオルタナティブ・ロック。それは程良くアップテンポだったり、ハーモニーに気を配ったりとポップさを意識した場面もありますが、そこには遠くの景色を眺めるような侘しさ、チクチクと胸を刺す寂寥が常に一貫しています。肩の力の抜けたツインヴォーカルは以前よりも透明感を増し、至って平熱なテンションの中に微細な感情の揺れを表現しており、時には「何も始まらないです/全部期待はずれ」といったセンテンスに少しばかりヒヤリとさせられたり。ただ決して悲嘆に暮れているばかりというわけではありません。この5年間にあった出来事が彼女たちの意識にどれほどの影響を与えたかは分かりませんが、音楽的には以前から見せていた要素がますます純化され、ちゃこさん印のジャズマスターの音色は昔ながらの安心感。「Branch in the Road」「Cloud Eater」などでは特にしっかり地に足のついた演奏の手応え、芯には凛とした強さを感じさせてくれる。自分の味を保ったままグッドソングを書くことに専念し、ここでまた新しい一歩を踏み出しています。

Rating: 7.5/10



toddle / Branch in the Road