川本真琴 with ゴロニャンず「川本真琴 with ゴロニャンず」

川本真琴withゴロニャンず

川本真琴withゴロニャンず

川本真琴を中心とする新バンドのデビュー作。


バンドメンバーには三沢洋紀や澤部渡といった通好みの面々が揃い、いったい何をやるのかと思えばこれ以上ないくらい気の抜けたアコースティック・ポップでした。「音楽の世界へようこそ」で見せた純朴な歌への回帰モードが今でも続いており、今度は気の合う仲間たちでのほほん度合いも割増しな、ちょうどジャケットにもある草野球そのままの長閑さ。ただ歌詞の中には不意に、目の奥に潜む深い感情をチラリと覗かせる場面もあったりして、なかなか油断ならなかったりする。「summertimeblues」では牧歌的なひと夏の情景が瑞々しいタッチで描かれ、「私が思ってること知られたら死んじゃう」では感情の断片が継ぎ接ぎされたような詞世界の中に切なさが香る。また「フラッグ」での視界がスッと広がるようなポジティブさもスムーズに胸に沁み入る。全体を通して夏の季語が多く用いられているため、この至極さっぱりしたアレンジの余白に聴き手は様々なイメージを描きやすいはず。それは遠い過去のノスタルジックな記憶だったり、これから来たるべき偶然への期待だったり。もう8月も下旬ですけども残暑はまだ続くだろうし、これから夏を始めてもいいじゃない。

Rating: 7.0/10



川本真琴 with ゴロニャンず/プールサイド物語