Cocco「アダンバレエ」

約2年ぶりとなる9作目。


前作「プランC」がシンセポップやらホーンセクションやらでかなり多方面に音楽性の拡散した内容だったのに対し、今回は彼女の出自でもあるオルタナティブ・ロックへと回帰した部分が大きいです。生音の暖かみと刺激を基調として中心の歌を際立たせた、言わば彼女の真骨頂。とは言っても初期のように聴き手の臓腑を抉ってくるような怨念を発しているわけではなく、心の隙間を埋めてほしいと愛情を求めるその歌の数々は、真摯かつ切実でありながらしなやかな優しさ、祈りにもにた清らかさを感じさせます。「フレア」のサンバ風アレンジや、「常情嬢」のパンキッシュな勢いに間の抜けたコーラスという遊び心もあるにはありますが、そこでもメロディ自体はシリアスな焦燥感を纏ったもので、Cocco のヴォーカルは変わらずにある種の重みを保ち続けてる。アンサンブルの中でもシンバルを多用してノイジーなうねりを発するドラムが一番のキモかもしれない。深く大らかなグルーヴ感は彼女の歌をガッチリと支え、広い空を自由に羽ばたくための力強い推進力となっています。旧来からのファンにとってはある意味安心できるであろう、新しいスタンダード。

Rating: 7.8/10



Cocco 「有終の美」 Music Video+メイキング