Clipping「Splendor & Misery」
- アーティスト: CLIPPING
- 出版社/メーカー: SUBPO
- 発売日: 2016/09/09
- メディア: CD
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話によると今作は「宇宙空間を放浪するたったひとりの生存者と、恋に落ちた宇宙船のコンピューターボード」が主人公となるコンセプトアルバムらしいです。みんな大好き SF だ!でも中身はスターウォーズやスタートレックのような壮大さ、ドラマチックな華やかさとは随分と距離を置いたエクスペリメンタルな代物。ドスの効いた重低音が鳴り響くノイズ/インダストリアルから、不意を突いて表れるソウル/ゴスペルのハーモニー、そしてリズムのグルーヴをほとんど必要とせずに繰り出されるフリーキーなラップ。それらが絡み合って緊張感と同時に何処か空虚で無常な、それこそ宇宙空間を思わせる浮遊感が生み出されています。短尺のインタールードを多く挟んだ仕掛けだらけの展開で、コークスクリューのごとく曲が進行していく。もしかするとこれをヒップホップとして正当に評価することは難しいかもしれません。しかし何が飛び出すか分からないコラージュ的な構成は非常に刺激的だし、早口で切れ味鋭く言葉を捲し立てるフロウにはヒップホップ本来の魅力が確かに生きている。チクチクと知覚の扉を開いてくれそうな15曲37分の音楽体験。
Rating: 8.1/10