きのこ帝国「愛のゆくえ」
- アーティスト: きのこ帝国,佐藤千亜妃
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2016/11/02
- メディア: CD
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作品を重ねるごとに真っ当なポップ化が進み、このままメジャーシーンに向けてのライトな変容を続けていくのかな、と安易な予測をしていた所への今作です。オルタナティブ、グランジ、シューゲイザー、ポストロック、また「LAST DANCE」では以前の「クロノスタシス」でも見せていた R&B 、「夏の影」ではレゲエ/ダブと、今までに見せていた音楽要素がますます精緻なニュアンスへと磨かれ、ディープな音響空間の中で密接に、丁寧に編み込まれています。一貫してスロウな楽曲群を美しく引き立てる音作りが何とも素晴らしい仕事。その中で佐藤千亜妃の歌声は肩の力の抜けた軽やかさ、柔らかな包容力の中に微かな冷たさも感じさせ、まるで森田童子、あるいは佐藤伸治のような幻想的な佇まいから不意に艶やかさも見せるといった風に、至って平熱なようで何とも表情豊か。前作でのストレートな歌モノアプローチより、むしろこちらの方がずっと歌の持つ魅力を伸び伸びと感じさせる。言わば現時点での彼女らの集大成とも言えそうな内容ですが、ここからまだいくらでも発展しそうな可能性も同時に見せている。いよいよ末恐ろしいバンドになってきた。
Rating: 9.3/10