2007-2016ベストトラック50選(洋楽編)

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昨日に続いて、ブログ10周年企画の洋楽編50曲です。また長々と50曲挙げております。はりきってどうぞー。




50. !!! (chk chk chk)「Must Be the Moon」

Must Be the Moon [12 inch Analog]

少しずつ質感を変化させつつも、一貫してダンスフロアの肉感的な熱狂を追い求め続けているカリフォルニアの6人組。個人的にはこの頃が最も生演奏による泥臭さ、汗臭さがムワッと匂い立っていて好み。我を忘れて夜通しダンスに耽るのも、その後うっかりワンナイトアフェアに縺れ込むのも、全て月のせいにしてしまえば上手いこと説明がつくのであった。

https://www.youtube.com/watch?v=wl0XLHy7kes




49. Belle and Sebastian「Nobody's Empire

Girls In Peacetime Want To Dance

個人的には初期のインディフォーク路線よりも、大々的にバンドサウンドが入って賑やかになった最近のベルセバの方が好きなのです。ただどれだけ装飾が多くなっても、根底にあるノスタルジックな寂寥は決して霞まずに存在し、品のある落ち着きは固く保持。その複雑なコントラストはもう百発百中と言っていいほど確実に琴線に触れてくる。ああ憎らしや。

https://www.youtube.com/watch?v=Rgb8am3NQU0





48. Meshuggah「Bleed」

Obzen

自分にとっての Meshuggah ファーストインパクトである「obZen」から、特にエゲツない彼らの殺気が表れた一曲。脳天にドリルをゴリゴリ捻じ込まれていくようなギターリフ、変拍子を多く盛り込みながらインダストリアル要素の強いへヴィグルーヴ。しかし極めて無機質なはずなのに、聴いてるうちに音全体がグネグネと奇妙な揺らぎを見せる、それが最高に気色悪くて気持ち良い。

https://www.youtube.com/watch?v=qc98u-eGzlc




47. Viet Cong「Continental Shelf」

Viet Cong

色々あって現在はバンド名を変更しているカナダの4人組。かつて70~80年代のインディシーンに蔓延していた闇を現代に甦らせようとしている禁断のバンドです。ポストパンクの殺気、ゴシック/ポジティブパンクの甘美なるポップネス、ノイズ/アヴァンギャルドの虚無。ここではそれら全ての匂いが同時に沸き立ち、未知の領域へと踏み込む時の快感を教えてくれる。

https://www.youtube.com/watch?v=hdMz7BUtOvk




46. Mew「Satellites」

プラス・マイナス

Mew は作品をリリースするたびにこちらの予想を裏切り、期待を上回ってくれる数少ない良心的バンドのひとつ。様々な実験/変遷を経てキャリア中最も王道な、スタジアムスケールと言っても良いくらいのポップネスを身に着けたアルバム「+-」の中で、その路線を特に象徴するのがこちらのオープナー。その美しさと気高さよ。

https://www.youtube.com/watch?v=VawIB4N_gmM




45. Protomartyr「Scum, Rise!」

Under Color of Official Right

上の Viet Cong とはまた違った形で古き良き時代のアンダーグラウンドを現代に継承するデトロイトの4人組。こちらはかなりパンクっ気が強く、無駄を削ぎ落としながら固い芯を通し、殺伐としたダーティーサウンドで聴き手に熱と冷たさを与える。その中にゆらりと匂い立つナイーブなメロディセンスもキモ。自分にとってのひとつの理想を体現してくれているバンドです。

https://www.youtube.com/watch?v=nsSBZ1mpQpI




44. Major Lazer「Keep It Goin' Louder」

Guns Don't Kill People...Lazers Do

EDM というジャンルが定着するずっと前からクソチャラパーティーピーポーのアタマと腰をグラインドさせまくっていた、この頃は Diplo と Switch のデュオ体制。聴いてるだけでどんどん偏差値が落ちていきそうな楽曲群のうち、この曲はスウィートなメロディが際立っていてスルリと入りやすい。デキる男は時代の数年先を読む。

https://www.youtube.com/watch?v=hXd6u9o6dYY




43. Burial「Archangel」

Untrue [解説付 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC322)

フロア対応のスタイリッシュなリズムパターンは、神経質な音響処理や捻じ曲げられたヴォーカルサンプルの不穏さによって全く別の表情へと変貌。この曲がリリースされた頃と現在とでは「ダブステップ」の定義が随分と様変わりしているように思いますが、どのジャンルに置いてもオリジネイターがそのジャンル内で最も異質な存在であるということを、彼は結果的に証明しています。

https://www.youtube.com/watch?v=8k_f2QK77ew




42. Skrillex「Scary Monsters and Nice Sprites」

Scary Monsters & Nice Sprites

自分の中でブロステップはこの一曲に始まってこの一曲で終わってます。と言うかもうこれだけで腹一杯になる。ロックバンドで同じことを試みようとした例もいくつか聴いたことがありますが、いやーやっぱり本家本元の破壊力には及ばない。何だかんだで泣けてしまうのがずるいんだよな。ラウドにもポップにも突き抜けたコロンブスの卵的なアレ。

https://www.youtube.com/watch?v=WSeNSzJ2-Jw




41. Efterklang「Mirador」

パレーズ

デンマーク発の大所帯バンドによるチェンバーミュージック、ポストロック経由のインディロック。ゼロ年代は Arcade Fire や Broken Social Scene などトラッド要素を含んだセカイ系バンドが多数台頭していましたが、彼らはその中でもある種北欧らしい寂寥、幽玄の雰囲気を纏ったポップ感で他とは一線を画していました。

https://www.youtube.com/watch?v=vSKIl-NeZeE




40. Girl Band「Why They Hide Their Body Under My Garage?」

Early Years [Analog]

ダンスアクト Blawen の楽曲に悪ふざけで泥塗りまくった痛快カヴァー。やり場のないエナジーがアドレナリンぶっ刺されてのたうち回ってるような、MV ともどもゲテモノじみた悪趣味なノイズパンク。彼らはノイズの扱い方、その見せ方に関してはすでに肉体で熟知しています。一点突破的なダンスビートのパワーと、先走り初期衝動の気色悪さ。ノイズはこれでいいのだ。

https://www.youtube.com/watch?v=KRdDTz8wL30




39. Goldfrapp「Happiness」

Happiness

暖かく差す西陽のようなノスタルジー、ウィスパーヴォイスが醸し出すミステリアスな雰囲気と表題通りの多幸感。この頃のフォークトロニカ・ポップな時期は結果的に彼女らのキャリアの中で異質のものになっていますが、改めて聴いても決して手の届かない夢を見ているような感覚があって、その暖かさの裏側の憂いにも惹かれているのかもしれません。

https://www.youtube.com/watch?v=mnHlGONToIc




38. Savages「The Answer」

adore life

「私は答えを見つけた」という、繰り返される高らかな宣戦布告。しなやかに、艶めかしく、それでいて荒々しさと芯の強さを備えたキラーチューン。彼女らがスタイリッシュなゴスに影響を受けているのと同時に、根本の部分は決定的にパンクロックであるということを深く印象付ける、ひとつのマニフェストとも言える曲です。

https://www.youtube.com/watch?v=kvvhHT0B5ck




37. Gold Panda「You」

ラッキー・シャイナー

我々を強く惹きつける音楽はいつだって夢を見させてくれるもの。ダウンテンポの力強いグルーヴと煌めく夜空の眩しさを体現したインディ・エレクトロニカ。絶妙にチルウェーブだったりフォークトロニカっぽい雰囲気を醸し出しつつ、腕白な遊び心が音自体にもハリとなって表れてる、そこが一番のミソのように思います。

https://www.youtube.com/watch?v=t5f7pQUdGzU




36. Marissa Nadler「Baby, I Will Leave You in the Morning」

Marissa Nadler

彼女が歌い出すと肺に水が溜まるような心地になり、空は翳り、鳥は去り、窓には露がしとしとと。何だか酷い言い草ですが、例えばメジャーキーの比較的暖かな歌を歌っていても、彼女の場合は裏側にそこはかとなく流れる情念、表向きとは別の意味深な含みを感じ取らずにはいられない。ましてやこのような辛気臭い曲では、いっそ心地良く心を萎びさせることができます。

https://www.youtube.com/watch?v=zkuhV62Gv90




35. Behemoth「Blow Your Trumpets Gabriel」

ザ・サタニスト 【CD+DVD(70分ライヴ+25分ムービー)付/ボーナス・トラック3曲】

自分が Behemoth を知った頃にはすでに超重量級ジャガーノートのようなデスメタルと化していたのですが、そこにシンフォニックな装飾、憎悪のアトモスフィアを纏わせ、よりアーティスティックなブラックメタルへと進化を遂げた彼ら。自分としてはこの楽曲でこそ彼らの音楽性がいよいよ完成体へと近づいてきたように見えて、あまりの頼もしさに打ち震えたものです。

https://www.youtube.com/watch?v=SnTL1L8a6YI




34. Grouper「Vital」

Man Who Died in His Boat

作品によって手法は微妙に異なっても、彼女の作り出すサウンドスケープは常に同じ効力を持っています。遠い過去の記憶から、もしくは大きな河を隔てた彼岸からの呼び声のように、優しくも薄ら寒い歌声が聴き手の意識をさらりと奪い去る。曲が終わった頃には現世にポツリと取り残されている自分に気付かされる。白昼夢を見たあとのように。

grouper 'vital' by kranky | Free Listening on SoundCloud




33. Ringo Deathstarr「Kaleidoscope」

カラー・トリップ

数ある現行のシューゲイザーバンドの中でも、個人的に最も親しみやすい愛嬌を感じるのがこのバンド。革新性や時代性なんかはどうでもいい、ただただ好きな趣味を突き詰めて世界を旅できればハッピーじゃないか。まるで青春が服を着て歩いているかのようなバンドマン・ロードムービーの体現者。ケセラセラでずっと生きていたい。

https://youtu.be/LxyYPlv4RVs




32. Sigur Rós「Gobbledigook」

Gobbledigook [12 inch Analog]

結果的に彼らのキャリアの中でも異色のポップチューンとなっているこの曲。しかし横道に逸れた飛び道具ではなく、牧歌的で幻想的な彼らの魅力の一断片を反映していることには変わりありません。プリミティブな祝祭感と理知的な音の配置は、Animal Collective または Arcade Fire などゼロ年代バロックポップへの彼らなりの回答だったのかも。

https://www.youtube.com/watch?v=PCt_uKAM0t8




31. The Field「Over the Ice」

From Here We Go Sublime

Kate Bush「Under Ice」をサンプリングしているが故の曲タイトル。実際はほとんど原型を留めていないレベルで曲の中に組み込まれているわけですが、曲全体から醸し出される幻想性は共通するものがある、と強引に言い切ってしまおう。いやしかし、キャッチーなフックを作りつつミニマリズムの恍惚感をここまで見事に抽出している楽曲もそうそうないはず。

https://www.youtube.com/watch?v=FQxEVhyvA0I




30. The Knife「Silent Shout」

Silent Shout

久しぶりに聴いてもほとんど古さを感じない、と言うか80年代エッセンスの昇華によりタイムレスな魅力を錬成してる気すらします。シンプルな音数により緊張の糸を強く張ったダークウェーブ・ハウストラック。ポップスとしてもゴシックとしても秀逸なサウンドの構築美には溜め息が漏れる。一度でいいからライブを見たかった。

https://www.youtube.com/watch?v=4uI1KXHJVO8




29. Gang Gang Dance「Glass Jar」

Glass Jar/Mindkilla [12 inch Analog]

インディ・アートロックによる音の桃源郷。耽美的でミステリアスなムードに何処となくエキゾチックな如何わしさがスパイスとして加わり、まるで極彩色の夢の世界を滑空していくような、ドラッギーな心地良さに体を包まれていく。彼らの言う「ダンス」とは何かの流行やスタイルに囚われない、本能が赴くままのプリミティブな「舞踏」を差すのでしょう。

https://www.youtube.com/watch?v=dacm6WPmdMM




28. Protest the Hero「Bloodmeat」

フォートレス

メタリックでありプログレッシブでありハードコアである、様々なエクストリームミュージックの旨味成分を吸収した演奏もさることながら、決してテクニックに溺れることなくヤケクソの熱血漢っぷり、臆面もなく屈強なヒロイズムを見せつける、その圧倒的なやりすぎ感に俺はいつでもガッツポーズを捧げてしまう。ロックは熱くなければダメだ。

https://www.youtube.com/watch?v=rhMfz4HrcEA




27. Grimes「Oblivion

Visions

今では良くも悪くも感受性豊かな天真爛漫サブカル女子という印象が強くついてしまった彼女。ただこの曲を初めて聴いた時は得体の知れない魅力を確かに感じたのですよね。ポップスターへの羨望とインディペンデントであるがゆえの自由度。儚い音像とは裏腹の生命力。センス一発っぽいけど綿密な計算もしてるんだろうな。なんてしたたか。ああ怖い怖い。

https://www.youtube.com/watch?v=JtH68PJIQLE




26. Mitski「Your Best American Girl」

PUBERTY 2

ローファイ、パンク、もしくはグランジ復権なのか?まあジャンルは何でも良いのですが、生まれながらに背負った自らの業を切り売りするような生々しさ、それがアクを残したままで程良くブラッシュアップされている、その絶妙なバランス感覚に惚れ惚れする。ハイブロウな佇まいを自ら率先して破壊していくセンス、その手法からしてエモーショナル。

https://www.youtube.com/watch?v=u_hDHm9MD0I




25. Portishead「Machine Gun」

Machine Gun (Spkg) [12 inch Analog]

10年以上の歳月をかけてトリップホップの呪縛から自らを解き放ち、より自由度の高いフォームへと進化した彼ら。この曲はタイトル通りの銃声を模したリズムパターンが、ひたすら冷徹に、無機質に繰り返される。そこには恐怖感やシュールさと同時に、逆説的にひとつの「人間性」を痛烈に描いているような気もします。聴いた後は悪夢で魘されそう。

https://www.youtube.com/watch?v=6HdIuusx2l0




24. Oneohtrix Point Never「Sticky Drama」

GARDEN OF DELETE [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] アマゾン限定特典マグネット付 (BRC486)

ホント何回聴いても「きっしょいなー」という感想がまず第一に来る。それはグロ要素満載の MV だけの話ではなく、偏執的に歪められたエレクトロビートやヴォイスサンプル、表層のノスタルジックなメロディからも放たれる強烈な腐臭、音の向こう側でニタニタ笑みを浮かべていそうなネチっこい悪意は、実験性という言葉だけでは決して片づけられない。

https://www.youtube.com/watch?v=td-e4i2BL_Q




23. The xx「Crystalised」

XX (Dig)

最初の一音がゆらりと鳴り、物憂げな歌声が挿入されたときにハッと息を飲む。必要最低限どころか必要な音すら鳴っていないのではという過度にシンプルな音。しかし音の隙間には濃密な空気、感情の機微が雄弁さを持って立ち昇る。音が透明度を増すほどに思いまでもが透けて見えてくる。この純度はある意味エクストリームな叙情表現。

https://www.youtube.com/watch?v=Pib8eYDSFEI




22. Björk「Lionsong」

Lionsong [12 inch Analog]

ストリングス、エレクトロニクス、そして Björk 本人のヴォーカルという基本軸は90年代の頃から変わっていないのですが、時代を経るたびに彼女の楽曲も丁寧に、時には大胆にブラッシュアップされ続け、そして今なお強烈な磁場を放っています。彼女の魅力がテン年代においても十分に有効であることを説得力十分に物語る名曲。

https://www.youtube.com/watch?v=MWHpoJT3qK4




21. M83「Midnight City」

Midnight City

彼の頭の中だけにある幻想、夢の世界を形作ることのみに注力した、そのガラスのような美しさと儚さ、ある種の潔さというのは曲を聴いているだけでもひしひしと伝わってくる。この幻想に没頭することが聴き手にとって幸福な作用ばかりを引き起こすわけではない、その危うい感覚にこそ自分は惹かれているのかもしれません。その意味でやはり彼はドリームポップ新時代の旗手。

https://www.youtube.com/watch?v=dX3k_QDnzHE




20. David Bowie「Blackstar」

Blackstar

「Blackstar」とは彼を導いたものであり、彼自身でもあった。昨年惜しくもこの世を去った Bowie が、まるで自分の運命を強く予感していたかのように残していった、妖しくも美しい闇の世界。かつて宇宙人であったり犬であったりした彼が最終的に辿り着いたのは黄泉への案内人、というのは妄想が過ぎるかもしれませんね。ただ最後までカルトなアート性を貫いて見せた、その姿はあまりにも誇らしいもの。

https://www.youtube.com/watch?v=kszLwBaC4Sw




19. Fuck Buttons「Surf Solar」

Tarot Sport (Dig)

エナジー大噴火。暴力的なハーシュノイズの積み重ねとトランスビートの組み合わせは、例えばうどんにカレーぶち込んだらめっちゃ旨い的な、でも実際はそんな単純に旨く出来るものでもないというシンプルさ故の奥深さ。彼らはそのノイズ×トランスに宇宙的ポジティブバイブスも混ぜ込み、Boredoms にも匹敵するレベルのプリミティブな躍動感を得ることに成功しました。爆音で聴くのが必須条件。

https://www.youtube.com/watch?v=d1SSP7uzB6M




18. Primal Scream「It's Alright, It's OK」

It's Alright It's Ok [12 inch Analog]

テン年代になってもプライマルは健在でした。「Screamadelica」時の享楽的でサイケな恍惚が滲み出るダンスグルーヴ、言わばその現代アップデート版。しかしそこには時代へのアンサーではなく、むしろ時代を飛び越えた普遍的な魅力が宿ってると思います。「It's Alright, It's OK」、ボビーがこんな風に歌ってくれればそれだけで俺はバッチリだ。光を追い求めてパーティはいつまでも続いていくという、あるひとつのゴスペル。

https://www.youtube.com/watch?v=Ty-IJ3qz-GE




17. These New Puritans「Fragment Two」

Field of Reeds

ゴシック、チェンバーミュージック、そしてニューウェーブ由来の強靭な実験精神。そもそもは Joy DivisionGang of Four 直系のタイトなポストパンクを鳴らしていた彼らが、凄まじいい速度で変化を遂げた末に見せた彼岸の情景。自分が音楽に望む要素がほとんど過不足なく、スムーズに連結されていて本当に驚いた。そのアートに向かうストイックな姿勢、神経を痺れさせる緊張感、そしてあまりの美しさに思わず溜め息も洩れる。

https://www.youtube.com/watch?v=ftvICVWLBKY




16. Crystal Castles「Celestica」

クリスタル・キャッスルズ

曲だけ聴けば儚く美しいシューゲイザー要素込みのシンセポップ、となるのですが、単にそれだけではならない狂気、悪意が根底に潜んでいるように感じるのは、やはり彼らの破天荒なライブパフォーマンスであったり、光と闇、聖と俗を鮮烈に対比させるアートセンス、ある種パンキッシュなアティテュードが裏側に存在しているからでしょう。現在はメンバー2人が仲違いしてしまい、新編成で活動中。

https://www.youtube.com/watch?v=IsxNUl1IHnE




15. Jónsi「Go Do」

Go

上にも書いた Sigur Rós「Gobbledigook」の流れを汲み、よりカラフルに、より強靭に進化を遂げたフロントマン Jónsi の会心の一発。バロックポップ、チェンバーミュージックの要素を消化し、厳しい冬が終わって春を迎え、景色が一気に華やいでいくような祝祭感が広がっています。こんな美しさはきっと今までに見たことが無かった。今のところソロはこの一回きりで終わっていますが、また気が向いた時にやってほしい。

https://www.youtube.com/watch?v=3wkYJdpbJtg




14. Yeah Yeah Yeahs「Heads Will Roll」

Heads Will Roll

ギターをシンセサイザーに持ち替え、それまでのガレージロックからシンセポップへと華麗な転身を遂げたこの時期のヤーヤーヤーズ。しかし軽薄なセルアウトではなく、感傷的なメロディがひどく勇壮なものに感じられるのは Karen の風格とも言えるカリスマ性に依る所が大きいかと。繊細かつ大胆に、豊かな表情で大文字のロックアイコンを演じきってみせる、その美しい姿はシンセの煌めきの中でも良く映える。

https://www.youtube.com/watch?v=auzfTPp4moA




13. Passion Pit「I'll Be Alright」

GOSSAMER

完全に夏。目も眩むほどの煌めき、臆面もない躁モード。それは何だか時間が経つにつれて失われたものを取り戻すための、自分を鼓舞するファンファーレのようであり、けれどやはり泡沫の夢と消えてしまう遣る瀬無さも内包した、つまりは我々がひと夏の情景に馳せる、痛々しいほどロマンチックな幻想。それを4分半の中に余すことなく詰め込んだ必殺ポップチューン。美しいものだけ眺めながら生きていたい。

https://www.youtube.com/watch?v=6Bmg3h7RSM4




12. HEALTH「Die Slow」

Die Slow [7 inch Analog]

インディロック、エレクトロパンク、ノイズ/インダストリアル、そのジャンルの狭間でゆらりゆらりと繰り広げられる血と汗と涙の宴。彼らの MV には共通して、まるでB級スプラッタ・ホラーのような、直接的な露悪趣味が目一杯に打ち出されていますが、浮遊感に満ちたノイズの中で血や吐瀉物までもが妙な美しさを纏って見えるのは、単なる自分の気のせいでしょうか。強烈な映像の裏側にある、目に見えないものを見ようとするバンド、それが HEALTH 。

https://www.youtube.com/watch?v=EWZxThGh5wQ




11. Animal Collective「My Girls」

Merriweather Post Pavilion

まるっきり俗世と切り離されたエレクトリック・サイケデリアは、まるでジャングルの奥地から湧き出る豊潤な泉のよう。アニコレは作品毎に様々なスタイルでアヴァンギャルドな実験を繰り返しながらも、根っこの部分にあるケバケバしいまでのポップネスは常に忘れずにいたと思います。そのメロディとサウンドの相乗効果という点ではやはり「Merriweather Post Pavilion」、そしてこの楽曲がひとつの極地。

https://www.youtube.com/watch?v=zol2MJf6XNE




10. Arcade Fire「Reflektor」

Reflektor [Analog]

未だ見ぬ場所へと絶え間なく旅を続けるインディロック・キャラバン。James Murphy の助力を得てファンキーなダンストラックに仕上がったこの楽曲。しかしそこにはダンスのフィジカルな快楽と同時に、迷路の中に迷い込んで抜け出せずにいる不穏な感覚、呪術的とも言える面妖なムードが充満し、それがバンドの持つエナジーをますます膨れ上がらせています。まるで混沌へと向かっていく未来を映し出しているよう。やはり彼らはバンドの規格を飛び越えた、大きな怪物のような存在感を放ってる。

https://www.youtube.com/watch?v=7E0fVfectDo




9. Rodrigo Y Gabriela「Tamacun」

Rodrigo Y Gabriela

いやもう何回聴いても鼻血が出るくらい格好良いのだ。ラテン/ボサノバのアコースティックギターが醸し出す情熱と哀愁、それを超絶技巧によって極限まで押し上げた名手の二人。アコギ2本のみとはとても思えないほどの、首根っこから身体を持っていかれるグルーヴ感。彼らが所謂ワールドミュージックの範疇に留まらない、極めてロック的な感性を持っているが故のエネルギー。男性の Rodrigo が主旋律を、女性の Gabriela がパーカッシブなプレイを担当してるというバランス感覚も良い。プレイヤーの熱量がダイレクトに伝わる名曲。

https://www.youtube.com/watch?v=wFabNGzmk0M




8. Bat for Lashes「Daniel」

Daniel [7 inch Analog]

例えば BjörkKate Bush などと同じように、Natasha Khan の歌は始まった瞬間に空気がキリッと引き締まるような感覚を受けます。幻惑的なエキゾチシズムと透明感、穏やかな歌声に秘められた底知れないエモーション。この頃はサウンド的にシアトリカルな装飾が多かっただけに、その歌がよりパワフルで勇壮としたものに感じられます。歌詞の内容も優しさの内にある激しい情熱、ひどく真に迫った切実さを伝えるもので、その世界観の深みにはいつも打ちのめされてしまう。

https://www.youtube.com/watch?v=9yEjT_pIkhU




7. Deerhunter「Agoraphobia」

Microcastle

意識を蕩かすような柔らかいサイケデリックサウンドは完全に毒物。「広場恐怖症」の曲名が示すように、外界の全てを一切シャットアウトし、ただひとりきりで死の恍惚へと落ちていく、その危うさと悲しさ。そしてそこはかとなく耽美な煌めき。3分間に込められた歌詞は至ってシンプル、故にその行間に隠れた感情の機微は深く、覗き見れば見るほどに濁った闇の中に吸い込まれそうな心地になる。このナイーブさがあるからこそ、自分は彼らに強く惹かれているのだと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=oup-m8Hxx4Y




6. Converge「Aimless Arrow」

All We Love We Leave Behind

悲しみや怒り、やり場のない感情が正しく的を見失った矢のように荒れ狂う。Converge の楽曲はエクストリームな攻撃性、アヴァンギャルドな構築性が目立ちますが、決して聴き手を置いてけぼりにすることはありません。彼らは常に我ら聴衆と真っ向から対峙し、その熱量を鼓舞し、振り上げられる拳に呼応し、身を擦り切らせるようにして祈りにも似た歌を歌う。その激しさに安定感はなく、むしろ悲愴を湛えた音のニュアンスには繊細なゆらめきを感じる。そこから立ち昇る人間臭さにこそ、彼らの魅力が潜んでいるはず。

https://www.youtube.com/watch?v=CrcY9I-BbjM




5. Cloud Nothings「I'm Not Part of Me」

I'm Not Part of Me

彼らの演奏にはあまり計画性が感じられない。一曲の中でリズムが走ることが多々あるのですが、それは意図的なアッチェレランドではなく、その場の勢いに任せて生き急ぐように衝動を発散させているが故の走りっぷり。ギターの音作りにしても必要最低限のラフな歪みしか入れていない。だからこその生身の人間の血が感じられるし、非常に生々しい切迫感がポップなメロディの端々から吹き零れている。彼らこそが本来的な意味でのパンクロックの継承者だと、自分は信じて疑いません。

https://www.youtube.com/watch?v=74TP8QhupLU




4. Antony and the Johnsons「Epilepsy is Dancing」

Epilepsy Is Dancing

最初の一声が響いた瞬間にその場の空気がガラリと塗り替えられる。上の Bat for Lashes と同様に、彼女もまた稀有な魅力を持ったシンガー。あまりにもシンプルで儚い楽曲と、癲癇の最中に見る極彩色の夢物語。この曲が発表された時期の Antony Hegarty は大野一雄に深いリスペクトを表明しています。年齢や性別を超越した時に生まれる、人間の業、畏怖にも似た美しさ。大野氏の舞踏と Antony の歌、その両者にある美意識はきっと根底の部分で強く繋がっているのでしょう。正しく孤高の存在。

https://www.youtube.com/watch?v=ccLW2Jb_lJM




3. Battles「Atlas」

Mirrored (WARPCD156)

シンセやサンプリングを駆使した前衛的マスロック、その良くも悪くもハイエンドで難解なイメージから大きく脱却した、超キャッチーな民族大移動的ロックンロールブギー。使用される全ての機材、手法に必然性があり、楽曲が持つ壮大かつ神秘的な世界観、歩を進めるうちに視界がどんどん拓けていくスリルには、初めて聴いた当初から強い興奮を覚えました。知性と肉体性がこれほどに高次元で組み合わさった例は他にはなかなかお目にかかれないはず。間違いなく彼らの到達点のひとつ。

https://www.youtube.com/watch?v=IpGp-22t0lU




2. James Blake「The Wilhelm Scream」

Wilhelm Scream [12 inch Analog]

行間に意味を含ませた文章ほど、言葉少なであろうともそこに雄弁な説得力を持たせるもので、それは音楽でも同じこと。徹底的に音数の抑制されたポストダブステップサウンド、その前衛的でスタイリッシュな音楽がここまでエモーショナルなものに成り得るのかと、目から鱗が何枚も落ちるような心地でした。もちろん彼自身のひどくウェットな歌心による部分も大きいのですが、音の隙間に漂う空気感、その繊細で微妙なニュアンスを含んだムードの向こう側に、底知れない感情の揺れを感じ取ろうとしてしまう。自分にとって現代のポップミュージックのスタンダードのひとつとなっています。

https://www.youtube.com/watch?v=isIABK-0ohQ




1. Daft Punk「Get Lucky feat. Pharrell Williams

Get Lucky

長々と書いてきましたが結局1位はこれしかないよなって感じでした。歴史に残る最高のピラミッド大作戦ツアーを経て、焦らしに焦らしでようやく出た新曲が、ダンスミュージックの過去、現在、未来を結い合わせる極上ファンクナンバーと来ては、こちらとしても期待の斜め上を完全に射貫かれた心地で一杯です。更にはグラミーのステージで会場中に艶めかしい夜の香りとユニバーサルな多幸感が満ち溢れた、あのパフォーマンスは Daft Punk が完全に天下を獲ったのだと実感させるのに十分なものでした。ポップミュージックの潮流の中で、00年代には「One More Time」という大きな楔を残した彼らが、テン年代にはこの曲で魅惑的なスパンコールの光を放っています。いつかこの曲をライブで、ここぞというハイライトで体感できる日を夢見て。

https://www.youtube.com/watch?v=h5EofwRzit0