Clap Your Hands Say Yeah「The Tourist」

THE TOURIST

THE TOURIST

2年8ヶ月ぶりとなる5作目。


メインソングライター Alec Ounsworth のソロユニット状態となってからの初作だった前作「Only Run」は、改めて聴くと彼の中にあった多様なアイディアを粗削りのままで陳列していったような内容でした。今作ではそこから全体的な方向性の纏まりを意識し、順当なステップアップを遂げています。裏返りがちな脱力ヴォーカルやローファイな演奏が醸し出す、ふわふわとした夢見心地なムード。それは彼がデビュー作の時点で一番のキモとしていた要素ですが、その原点へと立ち返ったインディポップの応酬。なおかつ 2nd で見せていた冷たくダークな雰囲気、The Cure に通じるマニアックで歪な美しさも全体に多く見られます。あてもなく夜の淵をひた走るような「Down (Is Where I Want to Be)」や「The Vanity of Trying」、あどけない可愛らしさの中にブルーな切なさを醸し出す「A Chance to Cure」「Ambulance Chaser」などにしても、牧歌的な心地良さの中にふとした拍子で崩れてしまいそうな繊細さが同居し、柔らかな音の鳴りとは裏腹にある種の毒を感じさせる。そんなニュアンスに富んだポップソングこそ CYHSY ならではの個性。本領発揮と言えるでしょう。

Rating: 7.8/10



Clap Your Hands Say Yeah "Down" (Official Video)