環ROY 「なぎ」

なぎ

なぎ

仙台出身のラッパーによる、約4年ぶり5作目。


元々他ジャンルとのクロスオーバーを積極的に実践している急進派というイメージはありましたが、今作ではもちろんヒップホップに軸足を置きつつも、ヒップホップの形式にまるで囚われないアイディアが多く活かされています。トラックメイカーとして名を連ねるのは三浦康嗣(口ロロ)、Ametsub 、蓮沼執太など多岐に渡る音楽性の面々。どちらかと言うとエレクトロニカ、あるいはアブストラクト・ヒップホップ寄りのシャープな音像は、理知的でスタイリッシュでありつつオーガニックな暖かみもそこはかとなく漂わせる。さらには隙間を多く取って静謐を湛えたアレンジ、短歌の引用を含むなど日本語詞に対する拘りも含めると、ドメスティックな侘び寂びの情緒まで端々から匂い立ってくる。それはヒップホップの枠組みを拡張すると言うよりも、あくまで自分自身のオリジナルな表現、サブジャンルの概念を取り払った新種のポップスを志向しているように見えます。ラップをしていればヒップホップ、なのであればこれはヒップホップでしょう。ただそういった区分けがまるで無意味に思えるほど、ここでの彼の姿勢はフレキシブルで流麗なもの。

Rating: 7.3/10



環ROY / フルコトブミ