パスピエ 「OTONARIさん」

OTONARIさん

OTONARIさん

9ヶ月ぶりのリリースとなるミニアルバム。


今年の5月にドラマーやおたくやが脱退を発表。テクニカルな屋台骨を失ったのは痛手だとは思いますが、これもまたひとつの転機だということで、この新作ではリズム面においての試行錯誤が目立ちます。最も顕著なのはトラップの導入。「(dis)communication」「空」「ポオトレイト」といった中盤の楽曲群において、人力だったり打ち込みだったり様々な質感の音色を使い分けつつ、深いタメの効いたグルーヴとスタイリッシュに洗練されたプロダクション、そこにパスピエ印のオリエンタルな和メロを組み込むという形で、ドラマー不在の状態を逆手に取った新たな試みを見せています。特に「空」なんかは浮遊感のあるシンセが CICADA なんかにも繋がる音像で、現行のチャートポップに対する目配せと同時に、バンドとして次なるステップに進むという野心が見え隠れする。ただそれ以外の楽曲は従来の流れを汲んだアップテンポなバンドサウンドで、こちらは「フィーバー」や「トロイメライ」など過去のキラーチューンに比べると力不足な感がある。総じては習作という印象ではありますが、これからの可能性も確かに感じさせる内容だと思います。

Rating: 6.1/10



パスピエ, PASSEPIED - (dis)communication [Full Ver.]